内容説明
第66回江戸川乱歩賞受賞作!
綾辻行人氏(選考委員)、推薦。
「序盤の地味な謎が、物語の進行とともに厚み・深みを増しながら読み手を引き込んでいく」
元刑事の藤巻は、交通事故に遭い、自分に軽度認知障碍の症状が出ていたことを知り、愕然とする。離婚した妻はすでに亡くなっており、大学生の娘にも迷惑はかけられない。
途方に暮れていると、当の娘が藤巻を訪ね、相談を持ちかけてくる。介護実習で通っている施設に、身元不明の老人がいる、というのだ。その老人は、施設の門の前で放置されていたことから、「門前さん」と呼ばれており、認知症の疑いがあり意思の疎通ができなくなっていた。
これは、自分に課せられた最後の使命なのではないか。そう考えた藤巻は娘の依頼を引き受け、老人の正体を突き止めるためにたった一人で調査に乗り出す。
刻一刻と現れる認知障碍の症状と闘いながら調査を続ける藤巻は、「門前さん」の過去に隠された恐るべき真実に近づいていくーー。
残された時間で、自分に何ができるのか。
「松本清張賞」と「江戸川乱歩賞」を受賞した著者が描く、人間の哀切極まる社会派ミステリー!
文庫化にあたり、受賞作の前日譚にあたる短編「春の旅」も収録。
目次
序章 宣告
第一章 身元不明者
第二章 行動監視者
第三章 犯罪当事者
終章 残された時間
(前日譚)春の旅
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
127
初読みの作家さん。介護施設の入り口に置き去りにされた謎の老人「門前さん」。軽い気持ちで引き受けた身元調査が思いもよらぬ方向に広がっていって…。警察内部や政治家のドロドロには辟易するけど、だんだんその核心に迫っていくスリルは読んでてドキドキした。身元を追う元刑事藤巻も軽度認知障碍。「門前さん」と自身を重ね、行く末を案じる姿が切ない。認知症という要素が絡んでいるせいか、苦手な社会派小説だけどとても読みやすかったです。2022/10/29
小説を最初に書いた人にありがとう
72
江戸川乱歩賞受賞作という帯を見ると読みたくなる性質で、初読みの作家さんと出会う。訳ありで刑事を辞めてマンション管理人をしている主人公の藤巻は軽度の認知症状が出始めていることを病院で知らされるところから始まる。離婚した妻と暮らしていた介護を学ぶ大学生の娘から、研修先の施設に置き去りにされた老人の身元を調べてほしいと依頼される。謎の老人について探るうちに事件に巻き込まれていく。認知症進行への不安、距離のあった娘との関係修復、深まるミステリー、一気読みでした。やはり、江戸川乱歩賞に間違いなし。2022/11/13
akiᵕ̈
41
20年前に組織の酷い仕打ちに会い警察を辞めてから、今はマンションの管理人をしている元県警二課の藤巻は、軽度の認知障碍の宣告を受ける。そこに福祉施設で研修をしている娘の祐美から、重度の認知症である身元不明の男の調査を頼まれ、初めは渋々だったが調べる内にとんでもない人物である事が分かり調査に乗り出す。藤巻自身が辛く悔しい思いをした警察内部の、そして己の出世の為に、また1人、人生を狂わされていた男がいた。調査した男の認知症は、藤巻自身がこれまでの人生を振り返り、これからを見つめ直すきっかけになっただろう。2023/03/28
うまる
40
乱歩賞。明日のわが身と、気軽に引き受けた老人の身元調査から、あれよあれよと思いもよらない展開に。巻き込まれる緊迫感や、老人のある事実が分かった時の驚きが凄かったです。陰謀話だけだと、どこかで見たような気がしないでもないですが、題名通り記憶の話と絡めた所が素晴らしい。特に手記の部分が傑作。自分が失われていく中での回顧録に胸が熱くなりました。わたしが消える前に、自分の大事な人がその人自身を失ってしまう前に、今やっておくべき事は何だろうと考えてしまいます。文庫版は短編があるので、文庫化を待った甲斐がありました。2022/09/21
三代目けんこと
38
文庫化になるのを待ち焦がれていた一冊。前日譚も含めてとても良く、終章の415頁にある一文に、グッときた...。さすが江戸川乱歩賞受賞作!2022/09/19
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