〈色盲〉と近代 - 十九世紀における色彩秩序の再編成

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〈色盲〉と近代 - 十九世紀における色彩秩序の再編成

  • 著者名:馬場靖人
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  • 青弓社(2022/08発売)
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  • ISBN:9784787274298

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内容説明

一般的には「異常」や「障害」としてネガティブにとらえられがちな〈色盲〉。だが、そういったイメージは「近代」によって作られたものにすぎなかった――。

ドルトン、ゲーテ、メリヨン、ブルースター、ショーペンハウアー、ヘルムホルツ、ヘリング、スーラ、ホルムグレン、シュティリング、そして石原忍……。18世紀末から19世紀末までの近代ヨーロッパと20世紀前半の日本で〈色盲〉という概念の形成や色覚検査器具の開発に関わった有名無名の哲学者、芸術家、科学者たちの言説を渉猟することによって、現代の私たちが知るものとはまったく異なる〈色盲〉の姿を浮かび上がらせる。

哲学・医学・生理学・社会学・芸術学・メディア論など、様々な領域にまたがる豊富な資料を横断的に読解しながら、きたるべき「色覚多様性社会」の構想をも視野に収めた画期的な成果。

目次

はじめに

序 章 視覚玩具としての石原表――色盲の両義性
 1 〈できる/できない〉の配分体制
 2 石原表の両義性――〈できる/できない〉の転倒
 3 石原表の「起源」――十九世紀の生理学と色盲
 4 石原表の遊戯性
 5 色盲者の〈昼〉と〈夜〉

第1部 「青」の時代――色盲の前近代

第1章 ジョン・ドルトンの「青」――色盲者の言語の発明
 1 ドルトン以前の色盲
 2 ドルトンによる色盲の観察報告
 3 「青」の過剰――色盲者の言語の発明

第2章 ゲーテの「青」――色盲者の色世界の可視化
 1 ゲーテと「青色盲」
 2 ゲーテの色盲観察法
 3 「青」の欠如
 4 『色彩論』における「青」と「青色盲」の位置
 5 ロマン主義の「青」

第3章 シャルル・メリヨンの〈青〉――色盲者の記憶の寓意
 1 ベンヤミンのまなざしを通してメリヨンを見る
 2 色盲の病跡学
 3 地層化する記憶
 4 〈青〉の消失と色盲の近代の夜明け

第2部 十九世紀における色彩秩序の再編成――知覚と言語の弁証法

第4章 色盲の「名」をめぐる論争――DaltonismeとColour Blindness

第5章 ショーペンハウアーにおけるカント哲学の生理学化――「経験的=超越論的二重体」としての色盲者の誕生
 1 ショーペンハウアーによるカント哲学の生理学化
 2 ショーペンハウアーの色盲論
 3 ショーペンハウアーと生理学の発展

第6章 ヘルムホルツ対ヘリング――生理学的な「原色」の探究
 1 生理学における色盲への関心の増大
 2 ヤング=ヘルムホルツ説とヘリング説の対立
 3 次世代への矛盾の継承

第7章 ラーゲルルンダ列車事故の衝撃――ホルムグレンの方法をめぐって
 1 ラーゲルルンダ列車事故とホルムグレン羊毛法
 2 「現行信号システム」の正当化
 3 「ラーゲルルンダ伝説」の再検証
 4 ホルムグレンの「ペテン」

第8章 カント主義の哲学者としてのシュティリング――知覚と言語の対立から仮性同色表へ
 1 ヘルムホルツ対ヘリング論争におけるシュティリングの立ち位置
 2 シュティリングのカント主義的色盲論
 3 シュティリング表の誕生――文字と色彩の綜合

第3部 石原表と「近代」のほころび

第9章 石原忍体制の成立――戦時科学と色盲
 1 ヘルムホルツ説とヘリング説の「綜合」
 2 戦時下の規律と三つの身体モデル
 3 『日本人の眼』における色盲の位置
 4 総動員体制と職業制限の崩壊
 5 新国字研究と「健康上完全無欠な眼」

第10章 いかにして色盲を「治療」するか――「補正練習法」と規律の技法
 1 「色盲治癒言説」の回帰
 2 精神から身体へ――「練習」の布置の変遷
 3 補正練習法の空間構造

第11章 石原表のゲシュタルト崩壊――石原体制の内破
 1 「数字の流動」の経験から出発して
 2 石原表の中心化/脱中心化
 3 草間彌生の水玉、石原表の色班、新印象派の絵具
 4 世界の色を塗り替える

終 章 色盲者の言葉を取り戻すために
 1 色彩の流謫と帰還
 2 色盲者が「飛ぶ方法」

参考文献一覧

あとがき

事項索引

人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

原玉幸子

2
色覚異常の本は医学的見地の報告書の類いが殆どで大抵退屈ですが、本書は、『純粋理性批判』のカントの哲学、ご存知ゲーテの文学、一体誰やねんのメリヨンの絵画・銅版画技術に彼を読み解く詩性、「観照」を用語として使う宗教的な要素を包含する芸術、ゲシュタルト崩壊等々、歴史的にも幅としても広く、相対的知覚=認識を論じていることに、凄く価値があります。著者の検証の深さと、時に批判的な切り口に嘆息しますが、自身が色覚異常者であるか色覚(異常)に執着がなければ、なーんの興味も感慨もないことでしょう。(◎2020年・夏)2020/05/29

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