内容説明
函館慕情…不思議な魅力を秘めた精神風土から生まれた人と作品―「函館の女」北島三郎、GLAY、小説の魔術師久生十蘭、亀井勝一郎、映像で甦る佐藤泰志、辻仁成、警察小説の今野敏…函館は、歌謡曲に多く歌われ、そして多くの多彩な作家を輩出した街である。本書ではその代表的な歌謡曲や文学の魅力をあますところなく紹介する。
「函館をはじめ北国を歌った歌謡曲はたくさんあるが、のちに北原ミレイが歌った『石狩挽歌』は、とりわけ船頭として行った鰊漁場で船が転覆して不慮の死をとげた父の記憶と強く結びつき、こころ揺さぶられるものがあった。」(「まえがき」より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HOUKAGO
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道南に育ったという筆者と共通する部分もあり、自分の親しむ街についてたくさんの作品と共に別な一面を知ることができた。歌については、朝ドラのモデルになっている小関さんらの作品も一部登場し、朝ドラファンとしてはタイムリーな話題として読んだ。後半の映画作品のところでは、多少ネタバレが過ぎないかと思いつつ、丁寧にひとつひとつの作品について触れられているので、函館という街の探究テーマとしての奥深さを感じた。2020/07/05
nishipakulu
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著者は道南・森町の人。函館近郊の水産高校に汽車通い、常に函館山を遠望する。その視点で函館の生んだ文学・評論・歌を生んだ歴史と風土の源流を探る。長谷川海太郎とその兄弟、その元町界隈から水谷準、亀井勝一郎、久生十蘭が輩出した背景。そして佐藤泰成、辻仁成、宇江佐真理と文献を渉猟して函館を探求する。元町に力点をおいた著作であるが、この街の不思議な魅力を伝える好著。 一点、高橋掬太郎の項で、かつて繁栄を誇った恵比寿町(十字街)の「銀座」(地方都市でよく見られる)と東京の「銀座」を混同しているのは残念。2020/06/15