内容説明
韓国文学の新シリーズ〈キム・エランの本〉刊行スタート!
《第一弾は、BTSのRMさんも愛読、韓国で17万部の大ベストセラー小説集》
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タクシー運転手のヨンデは、車内で、中国語のテープを聴いている。
数ヶ国語を話せた、死んだ妻が吹き込んでくれたものだ。
何をしても長続きせず、「家族の恥」と周囲に疎まれ、三十六歳で逃げるように上京した彼は、中国の地方から出稼ぎに来ていた親切な女ミンファと出会い、結婚し、貧しいながらも肩を寄せ合うように暮らしていた。
だが、やがて彼女はがんを患って……(「かの地に夜、ここに歌」)。
裏切り。罪。喪失。悲しみ。
韓国文学の旗手が贈る、哀切な8つの物語。
――この空の向こうに、幸せはきっとある。
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【目次】
■日本の読者の皆さんへ
■そっちの夏はどう?
■虫
■水中のゴリアテ
■かの地に夜、ここに歌
■一日の軸
■キューティクル
■ホテル ネアックター
■三十歳
■あとがき
■訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
102
キム・エランが2012年韓国で発行し2022年翻訳の短篇集。「外は夏」に続き2冊目読了。どの小説もつらい状況の中で生きる人が主人公であり、終わり方も取り残されたまま希望もないものが多い。そんな中印象に残るのは「かの地に夜、ここに歌」でタクシーに乗った客の言った「気になるが最後までタイトルのわからない歌」。ほんの一時共に暮らした女も主人公にとって最後までタイトルのわからない歌なんじゃないかっていうエピソード。他にも物語における主人公の人生の中で色んな言葉に出会い、それを取り上げるのが上手い作家と感じました。2022/11/27
ペグ
76
社会の片隅で日々の暮らしに疲れ、しかし虚無的にもなれない切なさ、やるせなさ。絶望することも出来ず彼らの暮らしはこれからも続く。季節は夏〜なのに寒い。じっとりとした冷たい汗。再読予定。2022/11/02
星落秋風五丈原
27
「そっちの夏はどう?」 どうやらちょっと太めらしいミヨンの父親は子供にあまり関心がなく、母親は逆に甘やかし放題。そんな中で大学の飲み会でいなくなった自分を探しに来てくれたジュン先輩に、ほのかな憧れを抱いていた。二年ぶりにテレビ局に勤めるジュン先輩からバイトを頼まれるが、その日は幼馴染の葬式の日で。「虫」 絶壁に建てられているローズアパートに住んで後妊娠がわかった私。ところが部屋の中にひっきりなしに虫が現れるようになり、ノイローゼ気味に。出張が多い夫も若干引き気味になる中、ある夜私がまたもや虫を見つけて。2022/08/22
ori
15
「外は夏」が良かったので読んでみた。これも様々な喪失についての短編で好きだなー。少し古い作品なので最近の、かつ長編を読んでみたい。 「かの地に夜、ここに歌」 映画「別れる決心」を見た後に読んだからかなんとなく似てると思う。奥さんが中国人だからかも?物悲しくて凄く切ない。最後なんか最高に好き。 「ホテルネアクッター」 仲良し友達と旅に出て、あんたなんでさー?という面と向かって言えないわだかまりがたまった挙句に口も聞きたくない最悪の旅になるという…これもあるな、ここまでの程度じゃなくても… 2023/04/17
フランソワーズ
8
『一日の軸』のキオクさんがマカロンを頬張る箇所。それと『キューティクル』で、欲望・見栄を”九センチ”で喩えるとこの描写が好き。2024/01/07