内容説明
いずれ夜に還る予約のようである生まれついての痣すみれ色
言葉で世界が変形する。
不思議な日常なのか、リアルな非日常なのか、
穏やかな刺激がどこまでも続いてゆく。
短歌が魔法だったことを思い出してしまう。
─山田航
【5首】
いずれ夜に還る予約のようである生まれついての痣すみれ色
花びらがひとつ車内に落ちていて誰を乗せたの始発のメトロ
手のひらの川をなぞれば思い出すきみと溺れたのはこのあたり
おふたり様ですかとピースで告げられてピースで返す、世界が好きだ
海の日の一万年後は海の日と未来を信じ続けるiPhone
【著者】
toron*
大阪府豊中市出身。現在は大阪市在住。Twitterで短歌に出会い、2018年4月からウェブサイト「うたの日」に投稿をはじめる。新聞歌壇、雑誌などへの投稿をしつつ、現在は塔短歌会、短歌ユニットたんたん拍子、Orion所属。
山田航
目次
Ⅰ
仮想上の観覧車
一生分の虹を見ていた
転生譚
この世の次の
Ⅱ
カトラリーズ
雨過天晴
書物の灯
ありとあらゆるさよならに
Ⅲ
わたしは街の細胞だった
くるぶしに桜
Sign
空を裁つ
Ⅳ
犬の眼線
Ⅴ
はやぶさとひかり
夏の弧
冬の達人
群青
解説 比喩という「変身魔法」 山田航
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
106
Twitterで短歌に出会う。20代の瑞々しさが眩しい。僭越ながら選句した五首「この夏で最後だという先輩のスリーポイントの弧のうつくしさ」「おふたり様ですかとピースで告げられピースで返す世界が好きだ」「果てしない夜をきれいに閉じてゆく銀のファスナーとして終電」「改札という櫛の歯を通るときわたしは街の細胞だった」特選「ひび割れた液晶越しじゃない空を見ていた卒業証書まるめて」他にもいい短歌が多数。イマジナシオンは寺山修司の詩から。想像という意味だが、仮想という意味もあるフランス語。書肆侃侃房・新鋭短歌シリーズ2022/04/24
スター
24
普段短歌の本を読まないので新鮮に感じました。2023/07/28
あや
21
とても上手な器用な方の歌集だなと思う。おそらく五七五七七との相性がとても良い方なのだと思う。私は字余りや句跨りの多い歌をよく詠むので、綺麗におさめる方は尊敬する。2022年2月刊。同年9月3刷。 露店より買う万華鏡たわむれに街を破片にしてみる日暮れ/一対のナイフとフォークのようになり傷つけあっても並んでねむる/花を生むように銀河を生むように蜜柑を剥いた手の香しさ/書くじゃなく鬱というときだけ文字は誰かの窓を叩く雨粒2025/06/17
ポテチ
20
文学フリマでお会いできたのでサインをいただきました。『おふたり様ですかとピースで告げられてピースで返す、世界が好きだ』と『この夏で最後だという先輩のスリーポイントの弧のうつくしさ』が好きです。2022/06/10
まぁみ
19
新鋭短歌シリーズも本書で60巻に。10分の1程度の作品しか保有していないが、どの歌集も甲乙つけがたい。付箋の数でいくと、本書はトップクラス。分かり易く親しみやすい歌が多かった。いくつかは俵万智さんを想像するような感覚だった。優しくて鋭い感性がとても心地よかった。誰も見たことのない夏見せたくてワンピースにして着てみたんだよ/空、空、空、空の車はつかまらずつかのま月へ挙手をしている/おふたり様ですかとピースで告げられてピースで返す、世界が好きだ/この部屋の暗さに顔を上げるまで旅をしていた四百頁2023/08/30
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