内容説明
ロシアの侵攻で甚大な被害を受けたウクライナ。人種・言語・宗教をはじめ政治思想や多くの歴史的事件を網羅して特異な国の本質を明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
221
「わかるかい、ジョージ、ウクライナは国にさえなっていない! ウクライナとは何か? 領土の一部は東ヨーロッパで、その他の部分は、これは大事なことだが、我々に与えられたものなのだ!」これは、2008年にジョージ·W·ブッシュとの対談で、プーチンが発言したものである。こんな考え方しているリーダーによる戦争であり、長期化の懸念は大きくなる。本書はウクライナに関する既成概念を、ことごとくひっくり返す。ウクライナの実態と、独立国としての不安定さを知ることができる。現代に生きる人間であれば、知っておくべきであろう。2023/04/29
Nobuko Hashimoto
28
メディアなどに流れるウクライナをめぐる誤解されがちな言説について簡潔かつ明瞭に解説。著者はフランスの政治学者。同地の歴史や情勢はたいへん複雑なので、本書をさっと一読しただだけですぐに理解できるということはないが、例えば「ウクライナは東西で分断している」といったような、断片的に伝わる情報によって刷り込まれてきたことが、いかにものごとを単純化(一部を極大化)しているかに気づかせてくれる。2023/04/01
スー
21
80フランスの女性東ヨーロッパの専門家のウクライナ近代史です。プーチン大統領がウクライナをナチと呼ぶのは独ソ戦時に反ソ連活動家達がドイツに協力したりドイツ軍に参加した事を指していてウクライナ独立派をそう呼び自分の行動を正当化している。西ウクライナではドイツに協力した独立派を英雄としている人達が多い一方、東ウクライナはロシアと同じく裏切り者とする教育を信じている。ロシア侵攻までのウクライナの情勢とロシアとの関係が分かりやすくなっていました。2022/09/18
ジュンジュン
16
1991年、ソ連崩壊に伴い独立。以後、他の社会主義国と同様、市場経済導入で社会は大混乱、一握りのエリートだけがチャンスを掴み財閥化、政治をも壟断する。21世紀に起こった二つの革命(2004、2013/14)は、汚職なき法治国家を求める市民の声だ。紆余曲折を経ながらも確実に前進していくはず…だったが、東方より暗雲が立ち込める。ロシアの介入。ウクライナは振り払うことができるのか?かの国が歩む道は険しく複雑だ。2022/11/18
バルジ
6
ウクライナ戦争前に刊行されているため2022年2月以降の激動期は本書の射程外である。しかしウクライナという地域の来歴と大国に翻弄されながらも醸成された「ウクライナ」意識がやがて国家となり現在に至るロシアへの勇猛な抵抗に繋がっているのは論を俟たない。また本書の特徴として市民社会の発達を取り入れている点であろう。多くのNGOやボランティアに人々が参加し意思表明をする、その代表例がマイダン革命であるが、現在の戦争の姿を見るにこの市民社会の強靭さは軽視し得ない。確かに汚職も多いが成熟した市民社会は未来を明るくする2022/12/10
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