内容説明
ところで私は、東京にいるとき、あまりチキンライスを食べない。
旅の空の下で、チキンライスは、私と切っても切れないものになるのである。
(本文より)
初対面の人びととの接触こそ旅の醍醐味と唱え、自分が生まれた日の父のことばを思い、四季のない町は日本の町ではないと説いて薄れゆく季節感を憂える……。時代小説の大家にして食エッセイの達人が綴る、食、旅、暮らし。
〈巻末付録〉有馬頼義・おおば比呂司・池波正太郎座談会「わたくしの味自慢」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コジ
27
★★★☆☆ 池波正太郎のエッセイ。散歩や映画を観に行った帰りにフラリと蕎麦屋に立ち寄って、お新香で一合徳利で日本酒を呑みながら蕎麦を待つ…。憧れる。2023/12/22
Shoji
24
東京の下町で昭和時代を生き抜いた池波正太郎のエッセイ。内容は、下町の風物、旅行、映画、食、家族、交友関係など多岐にわたります。普段の生活そのものが道楽であったようです。とりわけ、食と旅には一家言をお持ちのようだ。「家長たるもの、男たるもの」を地で行く池波さん、格好いいなぁ。憧れます。2024/10/06
ようはん
19
池波正太郎が少年期を過ごしたのは戦前期でまだ江戸時代の情緒や文化が残されており、剣客商売や鬼平犯科帳などの数々の作品のベースになった。しかし戦後の高度経済成長により失われていった哀惜も語られている。 2025/05/05
テツ
15
池波正太郎のエッセイ。勿論時代小説も全て面白いけれど、エッセイも面白いですよね。いくつになっても、仕事が忙しくても、余暇をしっかりと楽しんだり美味しいものを食べたりする時間は大切にしたいなと感じます。休日に時間を贅沢に浪費してダラダラと美味しいものを食べたり、散歩したり、そうした無駄な時間こそが人生を豊かにするし「しあわせ」と直結しているんだろうな。忙しい日常生活の中でもそうした余裕を忘れずにいたいものです。……チキンライス食いたくなるな。2023/03/06
剛腕伝説
10
大酒飲みで長男の正太郎が産まれたときに『今日は寒いので明日見に行きます』と産婆に告げた父親。二回の離婚を経験し、女の細腕で子供二人と祖母と曾祖母を養った母親。殺気だって働いていた母親は口も悪かった。『豆腐の角に頭をぶつけて死んじめぇ』、『隅田川には蓋がしてないんだから、頼むから、行って飛び込んでおくれ!』等と毒口を聞いた。そんな母にも捌け口があった。家族に内緒で10日に1度、浅草の金寿司で鮨を頬張ることだった。女一匹、気を張って生き抜いていたんだなぁ。2025/04/25