内容説明
――そうか、もう、あっちにいるのか。この飛行機は、棲み馴れたあの世から、これから生きていくこの世に着いたということか――。飛行機であの世へ到着したという設定の「星座のひとつ」。ハアちゃんと呼ばれた子どもの頃にまだ見ぬ町や人に憧れた記憶を描いた表題作など17篇。99歳で大往生した著者の最後の小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
彼岸花
31
寂聴さん最後の小説集。99歳とは思えないほど明晰な文章に“あこがれ”た。幼少時代の「ハアちゃん」の記憶があまりにも鮮明で驚くばかり。晩年は死期を悟り、読者に別れを告げているような描写が増え、切なかった。“あこがれ”とは、彼女が理想とする生き方だったのではないか。美しく年輪を重ね、小説家としての人生を極めた。悲しいことに、誰も老いには抗えない。書いて書き尽くして、今はどの星をめぐっているのだろう。懐かしい故郷は見えるだろうか。魂が安らかに、そこへ還れますように。愛をありがとう。11月9日、三回忌に。2023/11/09
まるちゃん
5
再読したいと思いました。ご自身の幼い頃のことをこんなにも鮮明に書かれていて、つくづく偉大な方だと思いました。 父親へ宛てた最後となってしまった手紙、おばさまの葬儀のこと、が印象に残った。丸い桶型の棺桶は私も幼い頃に見たことがあるもので、近所の方の葬列に子どもも混じって墓場まで歩いたことを思い出した。2025/05/18
こけこ
3
寂聴さんの文章、私は好き。これから新しい作品が読めないのは辛い。99歳で死去する直前まで執筆活動は、凄い。「はあちゃん」の話がほとんどで、懐かしさを感じた。ご冥福をお祈りします。2023/03/20