文春e-book<br> 台北野球倶楽部の殺人

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台北野球倶楽部の殺人

  • ISBN:9784163915869

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内容説明

時刻表を駆使したアリバイ崩しと台湾現代史に刻まれた悲劇をめぐる人間ドラマが松本清張を彷彿とさせる傑作ミステリー。
第6回金車・島田荘司推理小説賞受賞作。

昭和十三年、日本統治下の台湾・台北市。台北駅からほど近い喫茶店「グランドスラム」では野球愛好家の集まり「球見会」の定例会が開かれていた。
日本でプロ野球が発足してまだ三年目。当時もっとも注目されていたのは東京六大学野球で、この夜も話題の中心は早慶戦ともう一つ、台湾の高雄商業学校のエース兼四番バッター大下弘だった。球見会には六大学のOBが参加していて、彼らは大下を自分たちの出身大学にスカウトすべく鍔迫り合いを演じていた。
そんな折、球見会の会員二人が別々の列車内で不審な死を遂げた。この会の唯一の本島人(台湾人)会員・陳水金は台北の北鉄新店線萬華駅で、慶應OBの藤島慶三郎は高雄駅で台北から乗車した寝台列車の中で発見された。
台北南署の刑事・李山海とその相棒の北澤英隆は高雄署とも協力し事件の謎を追う。果たして二人の死には、「明日の球界を背負う逸材」大下弘のスカウト合戦が関係しているのか、それとも……?

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

旅するランナー

218
金車·島田荘司推理小説賞というのを知りました。中国語で書かれた本格ミステリー長篇を募る文学賞。第二回(2011年)には陳浩基「世界を売った男」が選ばれてます。さて、この小説は第六回(2019年)受賞作です。1938年、日本統治時代の台湾が舞台。列車内で起こる二つの殺人事件。二人とも野球愛好家倶楽部メンバー。そして、内地人·本島人·日本人が入り交じる人間模様。台湾の歴史も関わってくる、松本清張ばりの秀作です。台湾でも抗日運動があったことは知っておきたい事実です。2022/12/16

パトラッシュ

119
鉄道ミステリはアリバイ崩しが基本だが、植民地時代の台湾が舞台だけに支配する者とされる者の二重三重の過去が絡まってくるのが読みどころ。捜査を担当する台湾人刑事は同胞を守るため対日協力者となった男の息子で、単純に日本側を悪としていない。野球愛好家たちの揉め事から起こった殺人と思われたのが次々と関係者の隠し事が暴かれていき、時折り挟まれる軍の弾圧で没落した知識層の少年「阿義」の物語が意外な形で本筋と結びつき驚きの結末に至る。この時期の台湾でしか起こり得ない事件を描く点で、歴史ミステリとしての味わいも満たされる。2022/12/26

fwhd8325

59
先日、台湾文化センターへ行ったときに「おすすめ台湾本」のパンフレットに紹介されていた作品です。土地勘もなく、読むのに少し疲れました。それでも、ノベルス全盛時代のミステリを彷彿させる内容は、本格派だと思います。個人的には大下弘さんの話題もしっかり描いて欲しかったです。2023/09/22

ren5000

34
日本が台湾を統治していた時代に起こった殺人事件。帯に書いてある通り松本清張を彷彿させる社会派ミステリーでした。台湾の方が書いただけあって当時の情勢や心情が台湾人の目線で描かれています。興味深くあったけどちょっと読み辛くて理解の範疇を越えてしまったのが自分に残念でした。ただ後半の謎解きからのエピローグまでは一気読みでした。今は親日派の台湾ですがこれを読んで戦争は人類が行った一番の悪行だなと思う。2023/06/02

スイ

23
うわーー良かったよーーー!!! 日本統治下の台湾で起きた殺人事件。 ミステリとしてはちょっと懐かしの手法なのかと思えば、色々と押さえた上での現代のミステリだと思うし、背景も台湾の歴史を丁寧に捉え直した、やはり今だから書けるものなのだと思う。 人物の描き方もとても真摯で良かった。 読み終えてからずっと、あの人のこれまでとこれからを考えてしまう。 そういう余白のある作品が大好き。2022/09/25

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