内容説明
「それが、ここに流れてるあたしたちの血。あたしたちは無法者なの」 アメリカ、カリフォルニア州。海沿いの町ケープ・ヘイヴン。30年前にひとりの少女命を落とした事件は、いまなお町に暗い影を落としている。自称無法者の少女ダッチェスは、30年前の事件から立ち直れずにいる母親と、まだ幼い弟とともに世の理不尽に抗いながら懸命に日々を送っていた。町の警察署長ウォークは、かつての事件で親友のヴィンセントが逮捕されるに至った証言をいまだに悔いており、過去に囚われたまま生きていた。彼らの町に刑期を終えたヴィンセントが帰ってくる。彼の帰還はかりそめの平穏を乱し、ダッチェスとウォークを巻き込んでいく。そして、新たな悲劇が……。苛烈な運命に翻弄されながらも、 彼女たちがたどり着いたあまりにも哀しい真相とは――?人生の闇の中に差す一条の光を描いた英国推理作家協会賞最優秀長篇賞受賞作。解説:川出正樹
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
414
英国推理作家協会最優秀長篇賞ゴールド・ダガー賞受賞作ということで期待して読みました。主人公、自称「無法者」の少女ダッチェスは、大変魅力的ですが、肝心のミステリは・・・ 今年のミステリランキングの上位には来ないのではないでしょうか❓ https://www.hayakawabooks.com/n/n723848caefe72022/09/12
青乃108号
403
今年の一冊目。何という事か。昨日、2023年の年間ランキングを決めたばかりだというのに。早くも間違いなく2024年ランキングベスト1になるであろう作品を読んでしまった。これこそ俺の望む理想の物語。自ら「無法者」と名乗るダッチェス・デイ・ラドリーという13歳の少女を巡る波乱万丈の運命の物語は数々の名場面を強烈に印象に残しつつ、ぐいぐいと俺を惹き付けて離さない。登場人物も多いがそれぞれに良く描けている。そして物語は予測不能のツイストを経て、ラストシーンも極めつけの名場面だ。間違いなく今年のベスト1だ。2024/01/03
タツ フカガワ
249
カリフォルニアの小さな町に、15歳で収監され30年間服役していたヴィンセントが帰ってきた。7歳の少女シシーが死んだその事件以来、いまだ心の傷が癒えない人たちが住むその町で、まもなくシシーの姉スターが殺される。物語はスターの娘で父親が不明の13歳の娘ダッチェスと、ヴィンセントの親友で町の警察署長ウォークを軸に描かれるミステリー。周りから疎外されるも、その怒りを糧に弟ロビンを守るダッチェスがすごくいい。さらに終盤の二転三転する展開に翻弄された末に辿り着く真相、終章は涙で文字がぼやけました。2022/12/05
きよかつ
239
世界観がしっかりしていて、読みごたえ充分で楽しめたが重かった。結局子供達は救われたのだろうか。ダッチェスが良い意味での無法者として、しっかり、明るく生きて行って欲しい、と。2022/11/21
のぶ
214
評判に違わず充実した重厚な人間ドラマだった。二人の主人公が凄い。どちらも個性がしっかりとしている。少女ダッチェス13歳。ウォーク警察署長、難病との闘病中で勤務中。どちらも独立し、人を惹きつける個性と魅力を持っている。物語は30年前のショッキングなシーンで幕を開ける。若きウォークがシシーを発見する。陰惨な姿で路傍に転がるシシーの死体を。そして30年後の現在。波に侵食され、崖上の家が崩れ落ちてゆく海岸に見物客が群れるシーンで物語は再スタートを切る。成長小説としてもロードノベルとしても読める骨太かつ複雑な傑作。2023/01/05