内容説明
哲学の深奥を究めた上で、正統イスラームの立場から哲学を批判したガザーリーの名著。理性の限界を説きスーフィーへと転回を予示する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
52
アラブ圏イスラム哲学の発展に”事実上終止符を打った”と言われる哲学批判の書。哲学者が唱える世界の永遠性や「神」の知、因果説などについて問答の形でその矛盾を指摘してゆく構成。ギリシア哲学の流れを汲むイスラム哲学は新プラトン主義的流出体系をとり、万物の原因として「一者」(神)を観照します。この体系は一神教とそれなりに親和性があると思っていたのですが、作者はこの神の、ただ「自己のみを知る」という自存的なあり方を神の全知性・人格性の否定として何度も指摘していて、その、全能の人格神を求める真摯さが印象に残りました。2021/01/18
有沢翔治@文芸同人誌配布中
10
ギリシャの知識人がイラクに亡命していく。彼らはアリストテレス、プラトンなどの哲学・思想を中東世界へと伝播させる。知識が広まるのはいいことだが、ギリシャの世界観はコーランと衝突し始めた。そのような中で、イブン=スィーナーなどがコーランを合理的に解釈しようとする。アル=ガザーリーは反発を始める。http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51504153.html2019/03/12
Nemorální lid
4
『一者から知性、知性から霊魂、霊魂から自然へ、という枠組みの中で、すべての存在を説明しようとする新プラトン主義的流出論体系』(解 p.368)は、その哲学的解釈の中に自由意志を含め、本来のコーランに見えたる神の性格から離れてしまっていた。ガザーリーはこうした哲学者の神学観を『世界の永遠性、神の個物知の否定、および終末における人間の肉体の復活の否定』(解 p.375)の項目で批判する。彼の哲学批判は、理性の代弁者、乃至は理性批判でもある。理性によって信仰は擁立され得ぬ以上、彼はスーフィズムに移ったのだろう。2019/01/14
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