ちくま新書<br> 韓国の変化 日本の選択 ――外交官が見た日韓のズレ

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ちくま新書
韓国の変化 日本の選択 ――外交官が見た日韓のズレ

  • 著者名:道上尚史【著者】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2022/08発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480075000

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内容説明

従軍慰安婦や「徴用工」問題をめぐる歴史認識、経済、教育からコロナ対応まで。日本と韓国の溝がますます深まっている。日本が経済成長を遂げ、アジアを牽引した時代はすでに過去のものとなった。一方、韓国はグローバリゼーションに適応し、飛躍的な変化を見せている。この現実から目を背けず、近くて遠い隣国とどう向き合うべきか。長きにわたり韓国に駐在し現地事情に精通した外交官が、韓国市民の本音や日本観を冷静に分析。中国や世界も視野に、日本の進むべき道を提言する。

目次

はじめに/さま変わりする韓国/日韓の大きなギャップ/日本が進むべき道/第1章 韓国社会の変化/1 一九八〇年代の韓国/一九八〇年代韓国の日本観/一九八〇年代の韓国社会/2 世紀の変わり目──合理的な日本観と金大中大統領/二〇〇〇年前後──建設的・合理的な日本観が浮上/金大中大統領/3 韓国の時代感覚と外国観/若い世代が語る韓国社会/一九九〇年が境という時代感覚/よい関係を築こうという発想が後退/韓国の外国観のあやうさ/4 韓国社会の現在──儒教とグローバル競争の結合/まわりに気をつかう、マネー志向/世界で活躍する人材を──明確な教育指針/向上心が高いのは学生だけではない/儒教とグローバリズムの結合/コンプライアンス社会と同調圧力/変わらないこと──親切、近い距離感、勝ち馬に乗る/5 二冊の本/韓国人の五つの類型/左派のバイブル──「大韓民国は親日の国」/第2章 韓国の日本観──2011~22年/1 ソウル──これは自分の知っている韓国ではない/「日本がなぜ重要か、説明が難しい」/「これは、自分の知っている韓国ではない」/韓中連携で日本に対抗しよう/2 釜山──毎日デモの中、「日韓には何の問題もない」/昔は友好の象徴、今は年に三〇〇日がデモ/令和のはじまりに「反日の道」設置計画/「ハハ、気にしないで」/「国家の時代ではない。日本は古い」/3 歴史の問題/歴史は、民族の記憶に負けるな/韓国の言う「正しい歴史観」とは?/日本糾弾が正義/中国学者「民主国家韓国が、中国のような洗脳教育をする」/「韓国が道徳的に優位」とは/日本は別の国?/4 中国と韓国/中国の意外な面──冷静な論調、エリートの啓蒙/歴史と友好関係/韓国は中国に対して「無力感」、日本には「全能感」/中韓の感情対立/大国に囲まれ、鋭い外交感覚?/最近の変化──反中感情の高まり/5 安保意識の日韓「逆転」と北朝鮮/安保意識の「逆転」/北朝鮮に対する韓国の感覚/南北対話で国内支持率大幅アップ/「安保だよ」/6 ビジネス/日本企業はライバルではない/日本企業は営業が弱く、国際性が弱い/7 若者の日本観と教育/若い人の時代になれば大丈夫/北朝鮮観の変化と反日/8 民主主義と外交/民意と外交/裁判官は「法と民意に従う」/「日本は法を、韓国は正義を重視」?/自国民への説明不足/東アジアが民主化すれば、日本への偏見が改まるか/9 日韓比較あれこれ/韓国=大阪論/ふだん聞かないロジックを受け付けない/在日韓国人の指摘/習いごととスポーツ/コロナポスター「ありがとう、大韓民国」/第3章 日本側が留意すべき点/1 日本から見た韓国──四〇年で三回の「発見」/三回の韓国「発見」/失望──米中関係の変化との類比/「日本たたき」の心理──気にしなさすぎ?/2 日本側が留意すべき八つの点/韓国は今も日本に依存?/違うと言わず、うなずいてしまう/韓国を見くびるな/歴史を知ろう/日本の記者、学者の「作法」/ソフトパワーの強化/交流と外国語の効用は大きい/在外での政府の発信/3 日韓の絡まった構図/日本は韓国の何に気づいたか/「根拠のない楽観論」と「無視論」が支配/日本の理解を超えた韓国/それが韓国。厄介との前提で/最新動向──言葉でなく実体が前に進むか/第4章 日本の前を行く中韓/1 「日中韓協力」で見たもの/グローバル化と中韓躍進/日中韓の乗用車生産は世界の五〇パーセント/中韓の行政は日進月歩、日本の前へ/文化、ビジネスでも中韓が日本の前に/優秀な日本の国際人材、しかし中韓はさらに/2 北京、ソウルでの私の見聞/「日本の子はいいな、僕らの半分しか勉強しない」/日本の学校に通うと勉強が遅れる/韓国の「行政」今昔/中国のWTO加盟、韓国の釜山港──グローバル競争見すえた英断/中東での評──中国企業は日本より仕事熱心/世界での切磋琢磨に日本が入ってこない/文化で国家ブランド向上──昔は悔しい思い/日本がいちばん遅れている──音楽ビジネス/国と企業のソフトパワー拡大/3 新型コロナ対策と行政・世論/日中韓社会の差──既存システムの信頼度/コロナ対策/迅速大量動員の力──政府、軍、企業、医師/感染症対策の行政を強化/世論の向きは日韓で反対/戦力強化した韓国、自然体で臨んだ日本/カギは行政──科学・医療水準よりも/第5章 日本の心理と選択──傲慢と憤懣を超えて/1 「グローバル化に距離を置け」論/「最先端国日本が途上国を圧迫」──傲慢と良心のミックス/グローバル化に日本は適応しすぎた? 遅れた?/「日本は特別」──あくせくした国際競争と別次元?/次世代の幸不幸がかかる──「距離を置け」論の無責任/「町のネズミ」「きょろきょろ」こそ発展の動力/2 行政アップデートへの抵抗感/行政の役割と感染症/行政チェックと危機対策/「世界があって自分がある」意識/既存システム、グローバル化、国家/3 中韓への憤懣、「無視」と日本の得失/憤懣のあまり中韓の実態把握が弱化/相手の欠点だけ見てはゲームを戦えない/中韓へのスタンス──外交安保関連とそれ以外を区分/優等生がつまずいた歴史/4 結び──そして日本の選択は?/発展の中での後退──韓国と日本/アンテナを高く──中韓に、世界に/日本の選択はラクではない──隣国、世界のダイナミズム

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kan

25
外交官視点からリアルな日韓関係を、豊富なエピソードを交え分析し、言いにくいことを言語化してくれて頷くことも多く勉強になった。日本へ「マウントをとろうとする傾向」には唸ってしまった。先日聞いた講演でも、「日韓関係は垂直的関係から競合的関係=日本と肩を並べ先進国同士の関係へ」とあり、短期間で関係性が変化すると特にそうなのかもしれない。今週、ソウルのヒュンダイやLGの視察に行き「見せたい韓国像」が明確に見え、本書にある「日本企業はもうライバルではない」という自負も垣間見え、なんとも言えない気持ちになった。2024/08/29

梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」

13
▼著者は長らく韓国に駐在した日本の外交官。大阪府出身。▼日韓には歴史観や政治にかかわる諸問題で摩擦がある。また日韓の人々の相手の国に対する理解の仕方にも随分と差があるが、互いにそのことを理解していない。その様な事柄について著者が交わりを深めてきた両国の人々の本音を冷徹に分析しつつ、どのように日本は隣国に向き合っていくべきかを述べている。▼日韓双方にとって嬉しくなるような話題もあるし互いに向けた苦言も含まれている。▼日本が韓国に比べて遅れている点もはっきり指摘している。この点、大いに学ぶべきだろうと感じた。2024/06/15

二人娘の父

8
外交官という立場からの「日韓のズレ」。これは貴重かつ興味深いエッセイ。かかわっている年月も20年以上と長く、時系列における変化もよく分かる。正直、外交の世界は私には未知であり、分からないことだらけなのだが、外交官の矜持、誇りというものを知る。大事なことだと思う。少なくとも隣国にネチネチと嫉妬心を持ったり、「消滅!」などと叫んで悦に入るような部類の人たちにはできない仕事だろう。2024/10/24

すのさん

6
日韓の民間での文化的な交流の盛り上がりが、全てを解決してくれると考えてはいけない。ソフトパワーとハードパワーのどちらもが重要であると筆者は言う。日韓の歴史にお互いが真摯に向き合い、正確な歴史を認識することが何よりの課題であることがわかる。隣国ながらもその人間性や価値観など、異なる面を自身の駐在経験をもとに日韓の対日、対韓意識の差を分析してもあり、非常に興味深かった。終盤では日本が中韓に遅れている面についても説かれている。2022/08/30

とろりんとう

4
2022年10月、日経新聞書評本。在中国・在韓国大使館公使等を経験した外交官による著書。日本人の韓国観、韓国人の日本観のギャップが著しい。互いにマウントを取り、理解する努力を怠り、心理的に無視の状態。韓国だけでなく、中国にも同様の傾向が見て取れる。日本全体が内向きになる中、国際社会での日本のプレゼンスが低下し続けている。外交官として危惧し、日本の進むべき道を提言しているが、一朝一夕に解決できるものではない。日本人としては、まず中韓のグローバル社会における事実を客観的且つ冷静に見ることから始めるべき。2024/02/03

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