ちくま新書<br> 思想史講義【大正篇】

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ちくま新書
思想史講義【大正篇】

  • ISBN:9784480075024

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内容説明

明治~戦前昭和の思想史を通覧する四巻シリーズの第1回配本の本書では、大正期に焦点を当てる。明治以来の「国体」の確立と文明化推進の動きはこの時期に変容し、現存する日本を改造し解放への希望を与える思想と運動が盛んとなった。国家主導だった文明化と「国体」の設定を、民衆の側から再設定する動きが広がり、知識人や運動家がその動きを担っていく。こうした大正期の多様な思想を15のテーマと11のコラムで、最新の研究成果と学術的知見を交えつつわかりやすく解き明かす。

目次

刊行の辞……山口輝臣・福家崇洋/はじめに……福家崇洋/文明化と「国体」の行方/第一次世界大戦と「文明化」再考/戦後世界の再編と民族独立要求/解放と抑圧の先に/第1講 憲政擁護論……小山俊樹/憲政擁護と閥族打破──「大正デモクラシー」のはじまり/「民衆的示威運動」の系譜/浮田和民の「倫理的帝国主義」/尾崎行雄の「立憲勤王論」/憲政擁護の論理構造/第2講 天皇機関説論争……住友陽文/何が問題になったか?/国家は団体なのか/国家法人説批判/主権・統治権の主体/天皇とは何か/国体論と憲法/論争以後/第3講 民本主義……平野敬和/民本主義の背景/民本主義の内容/民本主義論の波紋/帷幄上奏をめぐる議論/民本主義と社会主義/第4講 教養主義……松井健人/「歴史」としての大正教養主義/旧制高等学校とドイツ語/帝大教師ケーベルと大正期教養派/人格・社会のための読書と躓き──阿部次郎『三太郎の日記』/政治的かつオカルト的な大正教養主義へ──阿部次郎の満鉄講演/第5講 大正マルクス主義……黒川伊織/民本主義と日本資本主義論争のはざまで──山川均と第二次日本共産党/唯物史観による同時代認識──明治維新の性格規定をめぐって/社会主義運動の再活性化──一九一九年/コミンテルンの日本への働きかけと第一次日本共産党の成立/「デモクラシー」的諸要求の拒否──普通選挙をめぐって/「主義者」からエリート学生へ──福本和夫の登場/第6講 大正アナーキズム……梅森直之/大正時代の思想的課題/日本におけるアナーキズムの導入と展開/大正アナーキズムの輪郭/「自我」と「労働」からの解放/大正アナーキズムの外延/第7講 アジア主義と国家改造論……萩原 稔/手塚治虫が描いた北一輝/日露戦争前後の北一輝/中国革命とのかかわり/『改造法案』1──執筆の背景/『改造法案』2──国家改造の実行手段=天皇を擁した軍事クーデター/『改造法案』3──国家改造の具体的内容/『改造法案』の影響──その後の展開/第8講 民族自決論……小野容照/民族自決とセルフディタミネーション/ロシア革命と自己決定する主体/ボリシェヴィキからウィルソンの民族自決へ/三・一独立運動/さまざまな民族自決論/黎明会、新人会と朝鮮/第9講 小日本主義と自由主義……望月詩史/小日本主義とは何か/植松考昭の小日本主義/三浦銕太郎の小日本主義/石橋湛山と自由主義/石橋湛山の小日本主義/小日本主義の評価/第10講 女性解放思想……小嶋 翔/〝性〟を問う主体の登場──平塚らいてう「元始女性は太陽であつた。」/産む性であることの困難/〝性〟の自己決定権をめぐって/人間としての平等か、女性としての権利か──母性保護論争(一九一八)/権利を求めて──新婦人協会(一九一九~二二)/個人としての自由か、社会としての保護・規制か/資本主義社会と女性──時代は昭和へ/第11講 新教育……和崎光太郎/新教育の誕生/新教育の展開/八大教育主張講演会/川井訓導事件/新教育の「終焉」/第12講 皇道大本と「大正維新」……永岡 崇/異形の変革思想/出口王仁三郎とその思想的ルーツ/大正維新とはなにか/終末論と身魂の洗濯/霊魂統御の技法とそのほころび/大正維新から昭和維新へ/第13講 水平社の思想……佐々木政文/部落差別と全国水平社/喜田貞吉の被差別民研究/部落差別の起源としての職業・身分/佐野学の部落解放思想/被差別部落民の応答/水平運動に対する喜田説・佐野説の影響/第14講 関東大震災と民衆……北原糸子/はじめに──「民衆」は歴史用語?/関東大震災発生と被災者の動向/社会政策を促す震災対応策/東京市社会局の創設/東京市社会局の震災救護事務──集団バラックの管理/集団バラックから追われた人々/住宅困難者向けの社会局事業/帝都復興事業は成功したのか/第15講 政党政治論……奈良岡聰智/大正時代における政党政治論/大正政変後の民本主義論/第一次世界大戦後の普通選挙論/政党政治論の諸相/政党政治史研究と人物論/政党政治論の遺産/コラム1 雑誌メディアと読者……水谷 悟/コラム2 生存権の思想……武藤秀太郎/コラム3 文化主義……渡辺恭彦/コラム4 日ソ国交論……富田 武/コラム5 労働運動論……立本紘之/コラム6 思想史のなかの「院外青年」……伊東久智/コラム7 植民地政策論……平井健介/コラム8 国際協調主義……酒井一臣/コラム9 パンデミック精神史の断片……藤原辰史/コラム10 能率増進論と科学的管理法……新倉貴仁/コラム11 社会政策・社会事業論……杉本弘幸/編・執筆者紹介/人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Mealla0v0

5
本書は大正期の様々な思想に関する論集であるが、扱われているテーマは、憲政擁護、天皇機関説、民本主義から、マルクス主義、アナキズムに、アジア主義や小日本主義、さらには女性解放思想や水平社、大本教などと本当に幅広い。これらは国体の動揺、資本主義の深化、第一次世界大戦への反応でもあった。方向性は様々であれ、変革を目指す思想が多く誕生したこの時代は非常に興味深い。個人的には14章「関東大震災と民衆」が、震災対応が社会政策を促進したことが指摘されていて興味深かった。2024/07/02

kana0202

5
新教育と皇道大本がおもしろかった。あと能率増進論と科学管理法。2022/09/20

iwasabi47

5
大正編が先に出たのは現在との連続性があるからかな? 別の方が書かれていたが、「大正」教養主義の起源の一例が、漢学の修養から出てくる、関東大震災が施しから社会政策に変わっていくとか。「文化編」も合わせて読むといいかな。私は読んでいない。明治編楽しみ。2022/08/24

くまくま

4
まず思想史とはというところからはじまり、ただでさえ知識不足の大正時代の多様な思想の隆盛に圧倒されそうになったが、思想面でこれほどの発展が見られたということは、大正時代が多層的に知識レベルの上がった、豊かな時代であったということを感じ取れた。また楽しみなシリーズが増えてしまった。2022/08/22

うめうめ

3
思想史なんて切り口で歴史を読むのは初めて 大正時代は短いけど、とても激動の時代。 デモクラシー、民本主義、国家改造、水平社、平塚らいてう、関東大震災。 いくつもの題材で語られるけど、いろんな切り口でも、吉野作造があらわれる。とても大きい存在のようだ。急に気になってきた。2022/10/06

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