内容説明
作詞・作曲の天賦の才に恵まれた、福田葵。彼が幼馴染と組んだバンド「Thursday Night Music Club」、通称サーズデイが、とうとう大手レコード会社の目に留まった。デビューの条件は、ベーシストを入れ替えること。
「君には音楽の才がある。代償を恐れて自分で才能の芽を潰すことは、音楽への裏切りにもならないか」
プロデューサーの中田の言葉を受け入れ、メジャーデビューを決断した葵は次第に変貌し――。
芥川賞作家の新境地、圧巻のバンド小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
139
バンドほど濃厚な人間関係に満ちた世界はない。音楽好きの若者が集まり好きに歌ったり演奏しているうちはいいが、やがてメンバー間で方向性の違いや能力差が残酷なほど露呈してくる。ビジネスが絡めば音楽以外の要求や都合にも応じる必要に迫られ、常に注目されるプレッシャーによるストレスにさらされながら売れる音楽を作り続ける苦しみと闘わねばならない。人は過去を切り捨てて割り切れるほど強くないので、酒やセックスに逃げたり薬物や暴力に走る。音楽の才能はあったが生き方の下手な葵が、重みに耐え切れず爆発してしまう姿は切なく哀しい。2022/09/09
クリママ
57
幼いころ母が買ってくれたおもちゃのピアノから音楽に目覚め、高校時代に幼馴染達とバンドを組み、作詞作曲の才能を見出され、メジャーへ駆けあがっていく。90年代の楽曲、アーティスト名も多数あげられるが、その頃のことを知らず、頭の中に音楽が鳴らないのが悔しい。初期メンバーは総交代し、ついには狂気へ走る。少年の日々、メンバーへの思い、彼女との生活、ステージ上の姿、対外的な言葉遣い‥それぞれがバラバラで統一感がなく、主人公の姿がつかめない。何よりも、読んでいる最中に、高橋弘樹作品と感じられないのが、残念だった。2023/01/08
いっち
46
「音楽が鳴りやんだら」どうなるか。主人公は音楽の才能に恵まれる。地元の友達と組んだバンドで、デビューの声が掛かる。デビューの条件は、ベースのメンバーを替えること。レコード会社の社員は言う。「本気で音楽をやりたいのなら、代償を払うべきだ」主人公は親友を切り捨てる。主人公は無響室に入る。音のない暗闇の部屋。無響室から出たとき、三種の音楽(作品、人間、世界)を発見する。「作品」を重視する主人公に、私は同意できなかった。一方「音楽」=「心臓の音」としたとき、音楽が鳴りやんだら全ては無になるという考えには同意した。2023/02/12
ぽてち
39
初読みの作家さん。第159回芥川賞受賞作家だが、あの頃はまだ図書館を利用していなかったから読み逃している。最初は純文学系の作家だと知らずに読み始めたため、逆の意味であちこち眉をひそめた。ストーリーは単純で、アマチュアロックバンドがレコード会社にスカウトされデビューし頂点に上り詰めるまでを描いたサクセスストーリーだ。ただ、そこには音楽のために様々な犠牲を強いられる苦悩や葛藤がある。往年のビッグネームが多数登場するが、ほぼすべてが洋楽、しかもあまり聴かないジャンルだったので戸惑った。期待した内容ではなかった。2022/10/09
tetsubun1000mg
31
初読み作家だが、冒頭部をパラパラと読んでいたらバンドを目指す若者の様子が面白そうで選ぶ。 筆者の音楽と楽器への知識によって本格的なバンドのサクセスストーリーのように進むのだが。 ポップスバンドからロックバンドに代わるにつれて主人公の葵も大きく変わっていく。 音楽に導かれたのか、憑りつかれたのか葵と周りのメンバーの人生まで巻き込む。 クィーンのフレデイ・マーキュリーの映画を見たが、映画そのまんまのよう。 酒、SEX,ドラッグ、暴力と破滅の道を突き進んでいく葵に怖さを感じる。 前半と後半で全く印象の違う小説。2022/10/28
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