内容説明
本書の目的は、近年発展のめざましい非平衡統計力学について、基礎から最先端までの道案内をすることである。現代的な非平衡統計力学の本格的な教科書(2000年代以降の大きな発展である、「ゆらぎの定理」などの「ゆらぎの熱力学」の考え方を本格的に取り入れたもの)は、本書が和書で初である。とくに、情報と熱力学を融合させた「情報熱力学」について本格的に解説された教科書は世界的にも例がなく、本書のもっとも大きな特徴である。
読者に専門的な予備知識は要求せず、物理学科や応用物理学科の学部2年までで習う程度の熱力学・統計力学の初歩的な知識だけで読めるように工夫されている。とくに情報理論については、完全にゼロから解説を行った(したがって、本書のそれなりの部分は、意欲ある高校生なら読めるはずである)。また、ランジュバン方程式など伝統的な非平衡統計力学の概念についても、予備知識を前提にせずゼロから解説した。
一方で、熱力学不確定性関係など、現在世界的に活発に研究されている最先端の話題についても詳細な解説を行っているため、統計力学を専門とするプロの研究者にも有益である。量子ドットから生体分子モーターまで多彩な具体例を取り上げることで、異分野への接続に留意した(とくに生物物理の研究者は、主要な読者層の一角になるはずである)。
ちょうど1セメスター程度の講義に用いることができるよう、コンパクトにまとめられている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みかん。
3
ゆらぎの定理。環境中の熱·電磁ゆらぎから得た情報を増幅器で増幅すればいいんじゃないかと感じました。2025/08/12
kumoi
2
マクスウェルの悪魔が存在していたら、熱力学の第二法則が破られてしまうのではないか。実際にシラード・エンジンではシステムの初期状態と終状態が同一であるにもかかわらず、kBTln2の仕事が取り出せてしまう。つまりシラードエンジンを実現できれば、永久機関が成立することになる。しかしどうやら情報熱力学的考察によると、システムにメモリ(マクスウェルの悪魔)を加えた系で熱力学の第二法則は破られないようだ。付録にあるシャノン・エントロピーと相互情報量の解説だけでもとても勉強になる。2024/04/10
N
1
近年発展を見せているゆらぎの熱力学と情報熱力学という熱力学の分野についての非専門家向けのレビューをしている本。3章のゆらぎの熱力学については式変形などが難しく今は目を通すだけしかできていない。情報熱力学はマクスウェルの悪魔のパラドクスという理論物理学の問題の解決を動機とし熱力学量と情報量を対等に扱う興味深い分野であり、当該分野のレビューを日本語で読めるこの本が出たことは意義深いことだと思う。ミクロな原理から熱力学を基礎付けるという著者の思想は従来の見方とは逆で興味深かった。2022/06/26
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