内容説明
世界の時間が止まるとき、二人の旅が始まる。
麦野カヤトは、高校の修学旅行で北海道の函館を訪れていた。
内気で友達のいない彼にとって、クラスメイトたちとの旅行は苦痛でしかない。
それでも周りに合わせてグループ行動を続けていた、そのとき。
世界の時が止まった。
まるで神様が停止ボタンを押したみたいに、通行人も、車も、鳥も、自分以外のあらゆるものが静止した。
喧騒が消え、静寂だけが支配する街のなか、
動ける人間は麦野カヤトただ一人……かと思いきや、もう一人いた。
地元の不良少女・井熊あきら。
「あんま舐めたこと言ってたらぶっ殺すかんな」
口調も性格もキツい彼女は、麦野とは正反対のタイプ。
とはいえ、この状況では自分たち以外に動ける者がいない。やがて二人は行動を共にする。
「琥珀の世界」ーー数日前に死んだ麦野の叔父が、そう呟いていたことを麦野は思い出す。
叔父の言葉は、世界の時が止まったことに関係しているかもしれない。
そう思い立った二人は、時を動かす手がかりを求めて、叔父の家がある東京を目指す。
時が止まった世界のなか、二人きりの旅が始まった。
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナギ
58
北海道に修学旅行へ出掛けた内気な少年だが、突然時間が停止し、訳のわからぬまま不良少女と出会うが世界は止まったまま。仕方なく少しやさぐれた彼女と東京を目指して旅をする事になる。というお話。ラストがこれで良いかは人によるかと思いますが、私は納得しました。学校にも来てきちんと再会出来る下地は残していたので、その後の二人ならこれで十分でしょう。欲を言うと旅の道中でもう少し仲良くする描写が強い方が高低差が出来て満足感が上がったかなと思います。2022/11/19
星野流人
55
まず俺はヤンキーヒロインが好きです。プリンみたいな金髪にスタジャン羽織った乱暴な口調のヒロイン井熊がかわいい時点で大勝利。そんな不良かわいい井熊と、なぜか時間の止まってしまった世界で、北海道の函館から東京まで徒歩で旅をする。楽しくないわけがないですね。最初は堅実に東京を目指していたふたりが、だんだんと時間の止まった世界に慣れていって寄り道したり遊んだりしてイチャついてる様子がとても楽しいです。誰にも邪魔されないこの旅が終わらなければいいのに、と強く思いました。2022/09/11
よっち
50
高校の修学旅行で北海道・函館を訪れていた麦野カヤト。苦痛でしかなかったグループ行動中に突然世界の時が止まり、そこで地元の不良少女・井熊あきらと出会い、時を動かす手がかりを求めて叔父の家がある東京を目指す青春小説。喧騒が消え、静寂だけが支配する街のなかで出会った口調も性格もキツい正反対な性格のあきら。時には衝突したり助け合いながら、それぞれが抱える苦い過去も明らかになっていきましたが、一方で絆を深めていった旅路で積み重ねた確かな心境の変化や成長もあって、そんな彼らが迎える結末にはぐっと来るものがありました。2022/08/18
オセロ
39
何の前触れもなく突如時間が止まった世界で出会った、高校の修学旅行で函館を訪れた内気な少年・麦野カヤトと、カヤトとは正反対の性格の地元の不良少女・井熊あきら。そんな2人が止まった世界でを元に戻す為にカヤトの叔父が生前言っていたことをヒントに、徒歩で東京を目指す旅路で紡がれる青春物語。 止まった世界ならではの問題を協力して乗り越え、互いが抱える深刻な問題を打ち明けて徐々に育まれる友情は尊いもので。そんな2人の旅の結末は彼らの未来に何かを残してくれるものだったと思います。2022/08/18
遙
30
とっても面白かった・・・。ある日突然時間が止まってしまった世界で、函館から東京へと旅をする。 時間が止まっているからこその苦労や葛藤を抱えながら、歩いて青函トンネルを抜け、空中に浮遊する雨の滴を全身に浴びたりと、まさに非現実的でありながら、立派な旅をしている2人の描写が丁寧に書かれていてとても楽しめたし、ずっと続けば良いとさえ思ってしまいました。 井熊さんが可愛いんだ・・・。誰にでも未来なんて来なければと思う瞬間があると思うけど、 [0秒の旅]のチャンスがあった時、自分はどう行動するだろうかと考えました2022/10/17