内容説明
戦国の気風が残る江戸時代初期、徳川幕府公認の傾城町・吉原が誕生した。吉原一の大見世「西田屋」女将の花仍は、自身の商いは二の次で町のために奔走する夫・甚右衛門を支えながら、店を切り盛りしていた。幕府からの難題、遊女たちの色恋沙汰、陰で客を奪う歌舞伎の踊子や湯女らに悩まされながらも、やがて町の大事業へと乗り出していく――。時代小説の名手が、江戸随一の遊郭・吉原の黎明と、そこに生きる人々の悲喜交々を描く傑作長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のり
100
幕府から公認の傾城町(吉原)を勝ち取った「甚右衛門」と女将の「花仍」。女将としては半人前だったが、店の切り盛りや遊女達の世話、幕府からの難癖めいた仕置に対して、懸命に立ち向かった。世間からは亡八と呼ばれ、冷たい目を向けられたが、江戸を支えた文化を築き上げたのも確かだ。初代からの信念を貫く「西田屋」。天晴であった。2023/01/05
じいじ
97
天下分け目の関ヶ原の合戦から十数年、家康が都を江戸に移した。男が遷都で動けば、女も黙っていません。「吉原誕生」に奔走する姿、その隆盛秘話が綴られた物語。これまで𠮷原を題材にした本は何冊も読んできたが、今作は取材が緻密で読み応えがあり面白かった。「廓・吉原」の表側だけでなく、そこで働く女たちの舞台裏の姿が、丁寧に描かれています。江戸幕府から吉原の店店に「売色御免」の御墨付けが出たのをきっかけに、東西の女たちの戦いに、さらに拍車がかかるも見どころの一つです。ゆっくり味わいながら、読み返したい一冊である。2022/08/11
優希
72
面白かったです。知っているようで知らない吉原の姿を見たようでした。吉原は江戸の遊郭だっただけに扱いにくい題材だったのでしょうか。思えば遊女関連を軸にしたものはこれが初めてだったかもしれません。江戸の遊び文化が興味深かったです。2022/09/05
sin
66
傾城町吉原の若い女将が遊女を連れた参詣の帰りに女歌舞伎に行く手を阻まれての大立回りからの破天荒な女の一代記と…そうした趣向の物語かと早合点したが、どっこいそんな軽々しい話ではない。江戸の初め吉原を売色御免の町とお上からのお墨付きを受け、亡八を自認しながらも自らの信念を貫いた男の業績“吉原”の成り立ちをその女房の視点から語り上げた物語だ。いうなれば近年ではあの鬼滅で女性の性が商品であることが物議を醸した遊郭が主役だと云える。その生業の倫理的な側面は別として江戸文化の一翼を担った場所であることは否めない。2023/03/22
ゴルフ72
58
まさに吉原ここに始まる。その意味が全編を通してひしひしと感じる。いつも時代物を読むたびに私の心はタイムスリップしてしまう。今回もそうだった・・・花仍の目を通してタイムスリップしてしまった。吉原黎明期から真の吉原となるまでを・・・一気に読んでしまった。2022/08/30