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内容説明
光文社古典新訳文庫では『変身/掟の前で 他2編』、『訴訟』につづく3冊目となるカフカの傑作短編集です。今回収録したのは、カフカが生前に自信をもって世に送り出した短編など8作。いわば、“カフカ本人のお墨付き”ともいえる作品です。ユニークかつ不思議な、じつにカフカらしい作品ばかり。表題の3作のほかに、「ボイラーマン」(既訳では「火夫」)、問題作「歌姫ヨゼフィーネ、またはハツカネズミ族」も収録しました。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中玉ケビン砂糖
58
これを読むと、正直葛藤している自分がいる。「俺のカフカはそんなんじゃない」と抗議する思春期の自分。そして「いや、お前はブロートの広告戦略に乗せられただけだ」と冷静に考える今の自分(実際、有名な「遺稿はすべて処分するよう依頼」などの『カフカ神話』群にはブロートのプロデュースが多分に寄与している可能性が高い)。課題図書として『変身』を読んだ中高生から届いた講演依頼を訳者がやんわり断るという変なエピソード(あとがき)にも、「若者が憧れがちな『わけがわからないからこそ考えるに値するんだ!』という誤読を2022/07/23
優希
46
面白かったです。シュールで思わずニヤリとしたくなるような感覚に襲われました。説明がない分、深読みする楽しみがありますね。2023/07/01
ころこ
38
ポケットマスターピースで今年読んだのをはじめとして、それぞれ数度づつは読んでいる短編群。ただ、『断食芸人』だけはなかったかな。『断食芸人』とは何なのか。「きっとそこには、偉大なる自己否定ってのも含まれているんですよね。」偉大なる自己否定これである。不可能性の、更にその消滅…2022/08/27
サンタマリア
36
『失踪者(アメリカ)』の一部である『ボイラーマン』の主人公カールは純粋さを守っている。彼はアメリカを移動し続ける中で様々な立ち位置に立つわけだが、その際も頑なに純粋さを守り続けているように感じる。その結果どうなるかが分かっていないふりをしているのではないか。他の長編では守る対象が自分の意見であり、だから僕はKには寄り添えず、カールには寄り添ってしまう。果たしてこれはカフカが望んだ読み方なんだろうか。 ああまた、読んだ本とは関係ないことを長々と綴ってしまう。コミュニケーション障害の常套手段として。2023/05/31
YO)))
21
「流刑地で」は、わりと最悪な読み心地の話でカフカ作品の中でもいっとう好きだ。「カフカ的不条理」とか寓話的とか言って置いておけない生々しさがある。機械─かの有名な自動処刑機械─の無気味な暴力性の他にも、文化コードや制度といったものの本源的な怖さが書き込まれていると思う。「歌姫ヨゼフィーネ、またはハツカネズミ族」は、歴史を考えない種族であるハツカネズミ族に現れた異質な歌姫を通して、芸術とは何か、その役割とは、普遍性や永遠性はあるのか、みたいなことを、鋭くもチュウチュウと問うている怪作。2022/09/18