内容説明
本書は、近年の出土史料から『史記』の記述をどのように補正できるのかに挑戦したものです。
司馬遷の記述は、秦の時代の史料に忠実に書かれている部分もあれば、出土史料と矛盾し、
修正しなければならない伝説部分も見られるのです。
出土簡牘(かんとく)に始皇帝の年代の史料が出てくれば、
該当する『史記』の基本史料と照合しながら、事実を補正できます。
その補正部分が本書でいう新説です。その補正作業は出土史料が激増しつつある現在では、
絶え間なく続くものであり、それがまた始皇帝研究の面白さであろうと考えています。
あえていうならば、現在の私たちは『史記』の記述よりも始皇帝の時代の真実に近づいています。
鶴間和幸
(本書「はじめに」より抜粋)
【もくじ】
序章
始皇帝研究を知るための予備知識
出土史料、始皇帝年表
コラム:定説がくつがえされた文帝陵
第1章
変わりゆく始皇帝像
始皇帝の名前、秦王即位時の権力構造、始皇帝陵造営の開始時期、
??の乱と始皇帝、始皇帝と皇太后、禁書坑儒の実態、遺詔をめぐる異説…など
第2章
秦という国の実像
秦と西方の関わり、秦と外国人、出土史料が伝える六国統一、占領地の疫病対策、
金人十二体が持つ意味、出土史料が伝える秦の戦争、秦と殉死…など
第3章
始皇帝に関わる者たち
昌平君、昌文君、李斯、王騎、李信、王氏一族、蒙家一族、六国の王…など
始皇帝関連人物小事典
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
13
『キングダム』に便乗した単なる解説本と見せかけて中身は本格的。竹簡などの、ここ1年ぐらいで発見・公表されたものも含む新出資料や最新の研究成果に基づいた解説となっている。史料の引用や図版も豊富。「図説」「図解」と題した方が良かったかも。2022/08/23
DEN2RO
0
始皇帝の事績を知るには、これまで「史記」の記述によるものがほとんどでしたが、近頃は中国各地で発見が相次ぎ、始皇帝に関して現代人は司馬遷よりも深く確かな知識を得つつあるようです。その一端を平明かつ興味深くまとめて紹介しています。『キングダム』ファン必読。2022/11/09