内容説明
罰を受けても罪は消えない。なら、どう生きていけばいい?
『天使のナイフ』『友罪』『Aではない君と』――
贖罪と向き合い続けた著者だから描けた入魂の傑作長編小説。
「自分は運が悪かっただけだ……」
女性を撥ねるも、逃げてしまった大学生
「やらなければいけないことがあるんだ」
愛する妻を奪われ、犯人の出所を待つ男
ひき逃げ事件の加害者と被害者遺族。両者の運命が交わる先にあるものは――?
深夜、飲酒運転中に何かを撥ねるも、逃げてしまった大学生の籬翔太。翌日、一人の老女の命を奪ってしまったことを知る。罪に怯え、現実を直視できない翔太に下ったのは、懲役四年を超える実刑だった。一方、被害者の夫・法輪二三久は、ある思いを胸に翔太の出所を待ち続けていた。贖罪の在り方を問う傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イアン
171
★★★★★★★★☆☆贖罪の在り方を問う薬丸岳の長編。大学生の翔太は飲酒運転の末に老女を撥ね死亡させてしまう。出所後も前科ゆえに社会に適合できない翔太だったが、一方で被害者の夫はある思惑を胸に彼の出所を待ち続けていた…。誰もが加害者になる可能性がありながら世間から非難されるという点において、轢き逃げという犯罪は絶妙な設定だ。死期を悟った父の手紙が加害者とその家族の苦悩を端的に表している。この先、翔太が心から笑える日が来るのだろうか。そしてそれを天国の被害者は赦せるのだろうか。タイトルの意味が心に沁みる良作。2022/11/01
ケイ
114
薬丸岳さんの少年犯罪を扱った作品にはいつも考えさせられる。今回も驚かされた。少年犯罪とはならないぎりぎりの年齢の大学生が起こした事故とその後の被害者家族の反応は、予想もしない方向に展開していった。被害者が償いをできる社会でなければと思う。2023/05/24
H!deking
106
前情報無しに薬丸さんの講談社は間違いないのでゲット。今回は飲酒運転の加害者と被害者家族の目線がクロスオーバーしていきます。こういうのはやっぱり薬丸さんですね。今回も重かったけど色々考えさせられました。。うちもいま娘が教習所通ってるけど、被害者にも加害者にもならないとも限らないので色々話したいと思います。2022/12/10
タツ フカガワ
102
飲酒運転及び轢き逃げで老女を死亡させた大学生の翔太に懲役4年10か月の刑が下る。やがて刑期を終えて出所した翔太の住むアパートに、老女の夫がある決意を胸に引っ越してくる。加害者の苦悩と贖罪、被害者遺族の悲嘆と怒りを軸に進む物語なので、なかなか重苦しい読書でしたが、エピローグで救われました。最後の老女の夫の告解は、ある意味どんでん返しかも。2022/09/18
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
97
一瞬にして他人の生命を奪ってしまうことになる交通事故。誰にでも起こる可能性のある出来事だ。主人公が取った行動はもちろん間違いで、その為懲役刑となるのは当たり前だけど、じゃあいざ自分が、或いは自分の子供が同じ立場になった時に正しい行動が取れるのか?怖くなり逃げたしたくなる気持ちも理解できる。大切な家族を奪われた被害者の家族の悲しみ。そしてその罪は一生自分の身にのしかかってくるのだろう。本当の意味で罪を償う事の難しさを感じた。★★★★2022/11/13