内容説明
本書は、美容行為(産業から日常的なものまで)を、男性支配と女性の従属を促進させる「有害な文化習慣」としてとらえ、西洋中心的・男性中心的価値観を痛烈に批判する。
目次
日本語版序文
新版序文
序 章 女性の従属と自傷としての美容行為
第1章 身体を支配する文化――主体性か従属か
第2章 西洋における有害な文化的慣行
第3章 トランスフェミニニティ――男が実践する「女らしさ」の現実
第4章 ポルノ化する文化――性産業が構築する「美」
第5章 ファッションとミソジニー
第6章 化粧の罠――日常の美容行為に潜むもの
第7章 足と靴のフェティシズム――足を不自由にされる女たち
第8章 切り刻まれる女――代理的自傷行為としての美容行為
終 章――自傷の文化から抵抗の文化へ
訳者解題
文献一覧
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
katoyann
29
国連や女性差別撤廃条約で指摘されている「有害な文化的慣行」として西欧社会の美容行為を批判的に分析した学術書。本書では、ポルノ産業が女性の美容行為に対して悪影響を及ぼしている事例として、ラビアプラスティ(小陰唇切除)や豊胸手術を挙げている。いずれも健康に害があるが、批判の槍玉になるのは、美容行為に投資することを女性の自己実現に位置付けたリベラルフェミニズムとポストモダンフェミニズムである。化粧もハイヒールを履くこともピアッシングもいずれも健康被害を超えて男性支配への従属を象徴するという。痛快なラディフェミ。2022/09/09
さとちゃん
8
美容行為を男性支配と女性の服従を促進させる「有害な文化習慣」として捉えるとは、どういうこと? と気になって読み始めて一ヶ月、ようやく読了。ちょっと違うかなと思うところもありはしたけれど、この視点は大切かもしれない。私にとって化粧したり、パンプスを履いたりする行為は戦支度だもの。2022/12/17
る
7
女性に美を期待する文化を創り出しそれにより性的興奮や金を得ているのは男性支配社会であるのに、女性の「選択」や「エンパワーメント」として美容行為が持ち上げられると男性支配が見えづらくなってしまう現象は本当によくあると思った。 イスラム文化でヴェールをかぶる女性に米国美容産業が化粧品を普及したのは一見女性の権利獲得に見えるが、従属を示すヴェールと性的客体化を示す化粧はどちらも家父長制的価値観であり、男性のように「何も気にせず公共の場に出る自由」を手に入れた訳ではないという例が分かりやすかった。2023/08/19
ウサギのバイク
6
トランス差別的だと一部で批判されていた本だが、テーマに興味があって読んだ。 西洋文化における美容行為は、国連のいう「有害な文化的慣行」にあたるのではないか?それは本当に女性たちが主体的に「選択」したものなのか? ポストモダニズムや新自由主義経済の中で隆盛を誇る美容業界、ポルノ産業の影響など、読んでいると、いかに女性が「従属する性」を強要され、誘導され、追い込まれているかに気付かざるを得ない。と同時に、今までモヤモヤしていた疑問がみるみる解けていく。 100%同意出来るという訳ではないが、非常に面白かった。2022/10/09
sacit
4
読みはじめてから読み終わるまで、かなり時間がかかった…。オートガイネフィリア性癖の人には実際に会ったことがあるから名前が付いていることをこの本で知った。美の執着についてもやっぱりなと思う部分もあったし、実践として自分は脱毛をやめてみて、剛毛な肌を見ながら半袖になると人目が気になって剃るか揺らいだこともある。叶うなら私は身長を20cm高くしたくて仕方がない。でもほぼ不可能だから、容姿についての理想を持たなくなった。コンプレックスだらけだけど、無理して繕わなくてよいと思える読書になりました。2023/11/27