内容説明
「尊重しあう2人の作家が交わした文章に、魂が宿り、ひとつの世界が形作られる」
キム・ボラ『はちどり』監督
韓国のアーティスト イ・ランと『ぼのぼの』の漫画家いがらしみきおの往復書簡。
コロナ禍の1年にわたって交わした手紙は、神、経済、AI、哲学、社会、映画、音楽、家族、生きること、等々尽きることなく対話が広がります。本書は韓国・日本でそれぞれ出版することになり、韓国では2021年12月にメディアチャンビより刊行。日本版には、その後に2人が書いた手紙を収録します。数々の苦難のなか交わされたことばは、深い思索と愛に満ち溢れ、読み手の胸に迫ります。
目次
プロローグ コラボやりましょう! イ・ラン
2020年春
2020年夏
2020年秋
2021年冬
2021年春
エピローグ ランさんについて いがらしみきお
2022年
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜長月🌙@読書会10周年
56
韓国のアーティスト、イ・ランさんと漫画家のいがらしみきおさんの往復書簡です。今の社会は日本も韓国も問題を抱え閉塞感があります。韓国はOECD加盟国ので中で女性自殺率1位、男女賃金格差1位、少子化1位、高齢女性貧困率1位です。国のあり方を全否定するものではありませんが何か変えていかなければなりません。「今とは違う世界」に踏み出すには何が必要でしょう。いがらしさんの一つの考えは今の圧倒的な「父権社会」に対抗する「母権社会」を目指すことです。2023/12/27
ズー
16
面白くてすぐ読み終えた。やるせない、暗い話題ばかり。けど、この2人だからただ暗いだけではなく、読ませてくる。ところどころにユーモアも散りばめられている。どっちかというとやはりランさんの方が、どうしても暗くなってしまうところを、共感しつつ、いがらしさんが手を差し伸べている感じもする。ランさんの考えすぎてしまって、とことん知らないと納得できないし、理解出来ないところ、私も似たようなところがあり、深く共感。保険会社の社長の周りが良いというものを何も考えず享受していけばいいという考え方、分かるけどなんか嫌だ。2024/01/06
治野
5
穏やかで鋭い言葉のやりとり。とても面白く読ませてもらいました。そして最後のやりとりで語られる内容は壮絶で、読んだ直後の私は泣きそうです。楽になれる時は、きっと来ます。私もそう思ってます。 2023/04/04
チェアー
5
生きづらい2人。特にイ・ランの苦しみは想像を絶する。なぜこんな世の中で生きなければならないのか。一つ言えるのは、生きているからこうして2人はやりとりをすることができた。生きた足跡をここにも残すことができた。生きることは積極的でも消極的でもいい。どうしてもしんどければ、自分で退場してもいい。そのしんどさは、生きているから分かったのだから。 いつ、退場してもいいように。やりとりの最後の言葉が、本当の最後の言葉になる可能性だってあるのだ。 2022/10/13
Yuho Tanuma
2
漫画家いがらしみきおと韓国のアーティストのイ・ランの1年間の往復書簡をまとめたものだが、読み手に深い爪痕を残す凄い本。ほっこりしたタイトルと装丁に騙されてはいけない。 社会や人への凄みを感じるような深い洞察と哲学的な問いかけに読む手を止めて考えさせられる。いがらしはむちゃくちゃ読書家で映画もたくさん観ててものすごい博識で、人間とは何か、この世界はなんなのかについて子供の頃から考え続けてきたことがわかる。 いがらし作品は愛読していたけど、改めて読み返したくなった。イ・ランの世界の捉え方もとても面白い。 2024/01/25