ちくま新書<br> 病原体から見た人間

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ちくま新書
病原体から見た人間

  • 著者名:益田昭吾【著者】
  • 価格 ¥715(本体¥650)
  • 筑摩書房(2022/08発売)
  • ポイント 6pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480063687

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内容説明

人類は地球にとっての病原体とよくたとえられる。実際、両者のふるまいには共通点も多い。無害な寄生体が恐ろしい感染症に変わる理由から見えた人間の本質とは。

目次

はじめに 病原体と人間の似ているところ、非なるところ
第一章 病原体の環境と人間の環境
「環境あっての生物」という原則に反する存在
宿主─寄生体関係の起源とは
病原体でも環境がなければ生きられない
感染症は本来の宿主─寄生体関係が成立しないときに起こる
感染症を宿主─寄生体関係で分類する
第二章 生物としての病原体
細菌に寄生するバクテリオファージ
本来の環境を失った生物のありよう
自分の存在が宿主に負担をかけるとき
ジフテリア菌が毒素をつくるのは本意ではない
ファージがジフテリア菌に毒素をつくらせる理由
ジフテリア菌の毒素は人間の知能のようなもの
有用な遺伝子と無用な遺伝子
無用な遺伝子の存在意義
利己的な寄生体の衝突としての感染症
入れ子のような階層構造
本来の宿主を失った微生物のありよう
増殖と生存の本質的矛盾
ファージが関係する病原細菌の生態
多細胞生物は無用な遺伝子により生み出された
破傷風菌に毒素をつくらせるプラスミド
プラスミドが抗生物質を無効にする理由
耐性菌との戦いは人間の一人相撲
第三章 いろいろな病原体の生き方
予防接種とは免疫のしくみを利用し直すこと
ヒトは破傷風菌の生態に影響力を持たない
プラスミドにとっての自己はクローン性の自己
腐生菌でも他の生物を殺さないのが本来の原則
結核菌にとってヒトは本来の宿主ではないのか
結核菌に感染しても発病しない人々
結核菌が大部分の人に免疫を与える理由
常在菌としての結核菌と病原菌としての結核菌
ヒトが人獣共通感染症で命を奪われる理由
ペスト菌にとってペストは生物学的に無意味な現象
宿主特異性を逸脱したときに病原性が高まる
インフルエンザウイルスの生態
流行の第一条件は宿主の分布密度が高いこと
本来の宿主に病気が起こる日和見感染症
もう一つの抵抗力としての恒常性維持機構
宿主に最後のご奉公をする常在菌
本来の住処でない部位で起きる異所性感染症
異所性感染症は日和見感染症でもある
成人でB型肝炎が劇症化する理由
水痘・帯状疱疹ウイルスの本来の宿主は小児
性感染症としてのエイズ
エイズのもう一つの病原体
諸欲は駆除しにくい心中の賊である
第四章 病原体としての人間
環境と生物は対等の関係にある
環境の論理と寄生体の論理
「ルビンの盃」のような階層構造
生物の主体性と環境の主体性
細菌における自己と人間における自己
無限の増殖は悪夢のような自己矛盾
自我意識として存在する人間
自然、生物、人間の脳がつくる世界
「われを忘れる」と「われに還る」
自我意識の無用性をどう代償するか
自我意識が知能を利用する理由
自然は人間の本来の環境ではない
人間が自然を破壊する理由
人間に体毛が少ないのはなぜか
A世界からB世界、K世界に移住した人間
本来の環境を失った人間の優越性と悲惨性
環境の消滅による死が必然であることを知る悲劇
個体性を捨てることで自分の有限性を克服する病原体
自我意識に寄生している欲
食欲は自我意識から生まれた寄生体
自我意識が日和見感染症を起こす
知識欲によって健康を損なう理由
世界の階層構造が崩落するとき
情報を際限なくむさぼらざるをえない餓鬼
第五章 人間特有の生き方
複数の個人を宿主とする寄生体としての「公」
記号による世界は時間的に存在する
人はなぜ真善美に憧れ、畏れるか
人間が生きるうえでの欲と理性の役割
有限な寿命に抗して生きるための二つの方策
人間はすべてK世界のなかでは孤独である
欲の持つ病原性が人間を悩ませる
記号の世界が人間本来の環境
人間が満員電車に耐えられる理由
ミームそのものとミームの産物
ジフテリアの比喩からミームへの懐疑
一子相伝と特許制度
知的財産の遺伝子工学
ミームとしての爪楊枝の消長
歯周病は歯の構造に由来する日和見感染症
宿主─寄生体関係から見たミームと自我意識
お金の有する生物性
金銭欲が病原性を発揮するとき
医学と生物学の階層性
死を前提としない医学
臓器移植における脳死と体死
無用なものは、変化の原動力
あとがきにかえて

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

baboocon

17
病原体が人体にとって害となる感染症を引き起こすのは、人体が病原体の本来の環境ではないから、というのが本書の核となる概念。生物学的な話が続くのかと思いきや、後半は人間の自我意識と身体や自然環境の関係を前半で述べる病原体と宿主の関係に喩えていて、哲学的な色合いが濃いと感じた(著者自身は病原体研究の専門家)。内容の是非は賛否両論あると思うが、その視点は面白い。文化やお金についても同様のアナロジーで解説しようとしている。2011/12/27

壱萬参仟縁

11
ルビンの盃を用いて、白く円形に塗ったものを「生物」に、黒い部分を「環境」に譬えて、「生物が存在しなかった旧い世界から生物が物として現れてくると同時に地としての旧世界は生物を支える環境へと変化する」(131頁)とされている。生物としての人間が、環境から病原体を取り込んで罹患するが、同時に、病原体としての人間ならば、他人に感染源ともなってしまう。この、人間の両義性は深いと思うと同時に、だからこそ、他人の健康には十二分な配慮が求められているのだ。わたくしも、どこのお客様宅に向かう時でもこの時期はマスク着用です。2013/12/31

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