内容説明
昭和21年7月。憧れのまっ白な軟式野球ボールを手に入れるため、山形から闇米抱え密かに東京へと向かった国民学校六年生の野球狂の少年たち。その大冒険は、疲弊と混乱の極みに達した東京の街を舞台に、一進一退のシーソーゲームとなって展開していく。眼前に広がる敗戦の実像、しかし人々はなおしたたかに生きている。戦後とはいったい何だったのかを少年たちの視点から繙(ひもと)いた永遠の名作。(解説・井筒和幸)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
46
真夏の大冒険ですね。井上氏の分身とも取れる少年たちが密かに東京へと向かう。戦後という時代を少年の眼差しで描いているのが良いですね。2023/02/14
みこ
17
作者自身を投影したであろう少年が友人たちと共に野球ボール一つのために山形から東京へ。終わりが少々唐突で尻切れトンボな感じはあるが、そこに至るまでの紆余曲折がまさに十三歳、真夏の大冒険といったところ。戦後、昭和、平成、令和と時代が変わっても何度でも読める名作。2022/09/12
sakwai
2
亡くなってからもう10年も経つのかとしみじみ読む。未読の作品がまだあるのは幸せなことである。物語のかなり早い段階で著者自身が「言葉の浪費は物語の密度を薄め読者の感興を削ぐ故、極力これを避けなくてはならない」と言いつつ、一見本筋には関係のない戦後の暮らしのあれやこれやが呆れるくらい徹底的に詳細に語られる。しかしその偏執的なデータの羅列が、物語の中で必死に生きる戦後の小学生たちの暮らす時代背景や彼らの関心事は何だったか、そんな状況が読む者の胸に迫って途中から涙なしには読めなくなる。これこそ庶民の目線と思う。2022/09/15
chuji
2
久喜市立中央図書館の本。2022年8月新版。1980年岩波書店から単行本として刊行。「井上ひさし」の著作を読んだのは何十年振りだろう?モッキンポット、手鎖、四千万歩等々懐かしいなぁ~ 本著作は初読でした。2022/09/14
20ccmsv6
1
戦後、山形の野球少年達がボールを手に入れるために東京のゴム工場に向かう冒険譚。井上ひさしさんの本を読んだのは初めてだったけれど、面白かった。知らない戦後の描写がたくさん。2024/03/11