アイドルについて葛藤しながら考えてみた - ジェンダー/パーソナリティ/〈推し〉

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アイドルについて葛藤しながら考えてみた - ジェンダー/パーソナリティ/〈推し〉

  • 著者名:香月孝史/上岡磨奈
  • 価格 ¥1,760(本体¥1,600)
  • 青弓社(2022/07発売)
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  • ISBN:9784787274496

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内容説明

今日、アイドルは広く普遍的な人気を獲得し、多様なスタイルや可能性をもつジャンルとしても注目されている。しかし、同時に多くの難点を抱え込んでいることも見過ごせない。
暗黙の「恋愛禁止」ルールとその背景にある異性愛主義、「年齢いじり」や一定の年齢での「卒業」という慣習に表れるエイジズム、あからさまに可視化されるルッキズム、SNSを通じて四六時中切り売りされるパーソナリティ……。アイドルというジャンルは、現実にアイドルとして生きる人に抑圧を強いる構造的な問題を抱え続けている。スキャンダルやトラブルが発生して、旧態依然ともいえるアイドル界の「常識」のあり方が浮き彫りになるたび、ファンの間では答えが出ない議論が繰り返されている。

その一方で、自らの表現を模索しながら主体的にステージに立ち、ときに演者同士で連帯して目標を達成しようとするアイドルたちの実践は、人々をエンパワーメントするものでもある。そして、ファンのなかでも、アイドル本人に身勝手な欲望や規範を押し付けることと裏表でもある「推す」(≒消費する)ことに対して、後ろめたさを抱く人が増えている。

本書では、「推している」がゆえにジャンルが抱える問題から目をそらすのではなく、かといって、現に日々活動を続ける一人ひとりのアイドルの存在を無視して「アイドル」そのものを「悪しき文化」として非難するのでもなく、「アイドルを好きでいること」と問題点の批判的な検討との両立を目指す。

乃木坂46やAKB48、ハロー!プロジェクト、二丁目の魁カミングアウトなどの具体的なアイドルの実践を取り上げる批評から、「推す」という行為のもつ功罪を問い直す論考、近年K-POPアイドルシーンで盛んな「女性が憧れる女性像」である「ガールクラッシュ」コンセプトの内実を検討するレビューまで、様々な視点から「葛藤しながらアイドルを語る」ことの可能性を浮き彫りにする。

目次

はじめに 香月孝史

序 章 きっかけとしてのフェミニズム 中村香住

第1章 絶えざるまなざしのなかで――アイドルをめぐるメディア環境と日常的営為の意味 香月孝史
 1 日常化するドキュメンタリー
 2 〈見る/見られる〉の先にあるもの
 3 承認と消費の間で葛藤すること

第2章 「推す」ことの倫理を考えるために 筒井晴香
 1 問題設定とこれまで論じた事柄について
 2 「推し活」の問題とアイドル
 3 「推す」ことの倫理を考えるために

第3章 「ハロプロが女の人生を救う」なんてことがある? いなだ易
 1 ハロプロの特色とその受容
 2 ハロプロの音楽は「女の人生を救う」か
 3 アイドルたちの「女の人生」

第4章 コンセプト化した「ガールクラッシュ」はガールクラッシュたりえるか?――「ガールクラッシュ」というコンセプトの再検討 DJ泡沫
 1 「ガールクラッシュ」とはそもそも何か
 2 韓国での「ガールクラッシュ」コンセプトの誕生と内包されるイメージ
 3 K―POPにおける女性アイドルの女性ファンに対するレッテルの歴史
 4 女性ファンたちが自ら選んで愛した女性アイドルと楽曲たち

第5章 キミを見つめる私の性的視線が性的消費だとして 金巻ともこ
 1 世界はひどくて悲しい暴力に満ちている
 2 キミを見つめる目ははたして暴力なのか

第6章 クィアとアイドル試論――二丁目の魁カミングアウトから紡ぎ出される両義性 上岡磨奈
 1 「当たり前」に対するわだかまり
 2 「異性」としてのアイドル
 3 フォロワー/カウンターとしてのゲイアイドル
 4 異性愛主義とゲイアイドル
 5 ジェンダーに対する無関心
 6 アイドルとジェンダー、セクシュアリティ

第7章 「アイドル」を解釈するフレームの「ゆらぎ」をめぐって 田島悠来
 1 疑似恋愛の対象としての「アイドル」
 2 メディア空間・言説からみる「アイドル/ファン」の姿

第8章 観客は演者の「キラめき」を生み出す存在たりうるのか――『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を通して「推す」ことの葛藤を考える 中村香住
 1 観客が演者のパーソナリティや関係性を「消費」することの功罪
 2 『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』における「二・五次元」コンテンツの枠組みの更新
 3 舞台少女の「キラめき」を生み出す「燃料」とは何か
 4 観客(オーディエンス)が演者(パフォーマー)を舞台に立たせるとはどういうことか
 5 キリンはサプライズがお好き?
 6 キリンが「舞台少女」と「普通」の「女の子」を執拗に区別することの意味
 7 なぜ、それでも「舞台少女」を続けるのか
 8 「舞台少女」と「舞台創造科」との共犯関係

第9章 もしもアイドルを観ることが賭博のようなものだとしたら――「よさ」と「よくなさ」の表裏一体 松本友也
 1 「アイドルを観る」とはどのような行為なのか
 2 賭博の美学性、観ることの賭博性
 3 アイドルの「アマチュア性」がもたらす賭博的緊張
 4 「わたしたちと同じ身体」による期待の裏切り
 5 「賭ける」ことと「推す」こと
 6 賭博的な快の裏に隠されるもの
ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

katoyann

20
文化社会学(ポピュラー文化)を専門とする社会学者やアイドルに詳しいライター達がアイドルファンの言動の背景にあるジェンダー規範や権利問題について考察した本。推しとは、交際や結婚や出産を志向しない愛に価値を置く(筒井論文60頁)ことだという解釈が興味深い。推しは恋愛至上主義を解体する可能性を秘めながら、推しのために浪費するという行為も見られ、資本主義の負の側面を助長するという両面価値的な行為とされている。アイドルファンの活動に潜む異性愛主義と性別二元論に注意を促しながら、ファンの葛藤を分析している点が面白い。2024/04/27

kenitirokikuti

8
【第4章 コンセプト化した「ガールクラッシュ」はガールクラッシュたりえるか? ー「ガールクラッシュ」というコンセプトの再検討】(DJ泡沫) 「3. K-POPにおける女性アイドルの女性ファンに対するレッテルの歴史」 〈この問題はそのまま、社会的背景や歴史の違いを加味せずに日本のアイドルと韓国のアイドルを比較して、韓国のアイドルの方が「フェミニズム的」だと評価する安直さとも直結している。〉〈独自のねじれや見解の断絶がある。〉2022/09/10

おでんのたまご

5
私も去年からアイドルとは違う畑ではあるけど、推しと呼べるような存在ができ、葛藤してたので買ってみた。アイドル自体にはあまり詳しくなくて、具体的に上げられてるグループもほとんどわからなかったけど、アンジュルムやガールクラッシュがキーワードになってるK-popは興味がわいた。みんなが生身の人間を推すということに少しだけ後ろめたさを感じてるくらいならちょうどいいのかもしれない。2024/06/18

シクロ

5
葛藤しながら読了。現場に行ったりしてお金を落とすタイプのオタクでないけど、楽しんでることにフリーライダー的な罪悪感を感じたり、シスヘテロ男性としてのぬぐいきれない性とかそれにまつわる暴力性に普段からうーんと思っていた。この本を読んで何かが解決した訳ではないけど、それぞれが割切れなさを持ちつつ考えていることは救いだと思う。 アイドルを観ることの賭博の類似性はなるほどと思った。確かに未完成性とそこから生じる偶然性みたいなのには惹かれる。2022/08/02

辻井凌|つじー

4
アイドルを多面的に考えるにはもってこいの本。今の自分にはぴんとくるものとこないものがあったけど、その気持ちも正直にとどめておきたい。気になる章から読んでみるのがいいかも。2022/07/30

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