筑摩選書<br> 日清・日露戦史の真実 ──『坂の上の雲』と日本人の歴史観

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筑摩選書
日清・日露戦史の真実 ──『坂の上の雲』と日本人の歴史観

  • 著者名:渡辺延志【著者】
  • 価格 ¥1,716(本体¥1,560)
  • 筑摩書房(2022/07発売)
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  • ISBN:9784480017505

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内容説明

歴史の謎を追うジャーナリストである著者は官修『日清戦史』の草稿を読み解き、不都合な事実を隠蔽、改竄して陸軍が戦史を編纂していたことを見つけ出した。隠蔽は戦争の根幹部分に及び、編纂方針はその後の戦史でも踏襲され、戦争の実態は国民の目から遠ざけられた。『坂の上の雲』が描いた日露戦争の姿に多くの日本人が驚いたのもそのためであった。隠された事実とは何だったのか。埋もれていた歴史を掘り起こし一二〇余年の歳月を超え日清戦争の実像に迫り、日本人の歴史観のあり方を問いなおす。

目次

はじめに/第一章 「日清戦史決定草案」/「佐藤文庫」/四種類の草案/残っていたのは一三%/王宮への攻撃/「七月二三日戦争」の背景/時機は来れり/配置と任務/依頼の有無に関せず/追い込まれた大隊長/豊島沖海戦/成歓の戦い/第二章 追加部隊の派遣/宣戦布告/二つの「遂に」/時機を失いたり/釜山港での混乱/ソウルを目指す行軍/元山からの行軍/第三章 平壌を目指す/反抗するもの益々多き/李鴻章の脳裏/わずかな食糧/師団長の境遇/第四章 平壌の攻防/惨憺を極めた食糧事情/攻撃は九月一五日/平壌への総攻撃/混成第九旅団の苦戦/朔寧支隊の戦い/元山支隊に届いた「降伏」の書簡/蓄えられていた食糧/第五章 掲げられた白旗の謎/「清軍の情況」/戦う意思ない司令官/勇将・左宝貴の戦死/埋もれていた驚きの事実/任意撤退/清軍の敗因を分析/「原書存せず」/「未詳」や「不詳」/日清戦争のイメージ/部長会議の議事録/第六章 『日露戦史』の編纂/書いてはいけない一五項目/谷寿夫の『機密日露戦史』/旅順要塞の攻防/二〇三高地の登場/「全く虚偽である」/爾霊山の記憶/「通俗戦史」への批判/谷寿夫の視点/第七章 陸軍にとっての戦史/陸軍大学校の開校/「日本戦史」の編纂/メッケルの弟子東条英教の起用/決定草案は非公開が前提/川上操六の死と体制の変化/東条のその後/栄進を果たした大島健一/東条英教の著作/東条の視点/甲申政変と金玉均/正史から消されたもの/おわりに/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

108
太平洋戦争における軍部の敗戦や失策隠蔽は有名だが、その淵源は半世紀前の日清戦争にあった。公刊戦史とその草稿を比較検討し、統制に従わない司令官や兵站の破綻、平壌総攻撃での錯誤など数々の失敗を明治陸軍が改竄し、英雄的な勝利のみを国民に宣伝していた実状を明らかにする。こうした考え方は日露戦争から太平洋戦争まで受け継がれ、都合の悪い事実には蓋をする軍部の宿痾となった。最初の草稿で事実を正確に記したため軍上層部に疎まれた東條英教の息子が、歴史歪曲と暴走の果てに自滅した陸軍と大日本帝国の清算人を務めたのは何の因縁か。2022/11/07

まーくん

82
今日の日本では、殆ど注目されることのない戦争となった日清戦争。大国ではあるが旧態依然とした清国を、維新以来、富国強兵を進めてきた我が国がいとも簡単に打ち破ったと理解されてきた。しかし著者は、ある資料を読み解くことにより、日清戦争の実態に迫る。それは陸軍参謀本部が『日清戦争史』編纂の過程で作成した「日清戦争史決定草案」で、公刊戦史の朝鮮政府の依頼という開戦経緯の実態はソウルの王宮を日本軍が攻撃、国王を捕え無理やり依頼させたことなど克明に記録していた。又、戦史編纂を巡る参謀本部内の会議記録も見つかり⇒2026/02/08

kawa

35
日清・日露の公刊戦史と、その原典資料を比較検討することで公刊戦史の欺瞞性を明らかにした労作。日露戦後の軍部劣化が昭和の悲劇を招いたとする説明がもっぱら。しかし、本書によると中央の指示に従わない現地部隊の独断的行動、指揮官の個人的野望・思惑による無謀な作戦、人命・兵站軽視の部隊運用等は既に日清戦から現れており、それらを公刊戦史からオミットしたことが後の悲劇につながった由。なるほどの感。日露旅順戦も日清の経験を盲信し、要塞攻略に対する甚だしい準備不足のなか単純な肉弾戦を繰り返し夥しい 人的被害を招いたと指摘。2022/10/21

K.H.

14
これは良書だった。気をつけるべきは「日清・日露戦争」ではなく「日清・日露戦争『史』」の真実だということ。日清戦争の公刊された戦記は、当初の草稿にさまざまな歪曲を加えて編集されたものであることが、新しい史料を基に説明される。早くもこの時代に、「皇軍」の不都合となることや有力将官の失敗は隠蔽されるという、のちの軍部の病弊が生まれていたことになる。それはまた、希望的観測にすがり、失敗から学ぼうとしない体質の始まりでもあった。この分野の研究の進展が待たれる。2024/01/05

おとん707

13
日清日露戦争、特に日清戦争についての知識はなく私にとって謎の戦争だった。そんななか読メのお気に入りさんの投稿で本書を知った。本書は戦史そのものではなく特に日清戦争の開戦理由と日本軍の戦果が公式戦史編纂の段階で軍の都合でいかに歪められたかを編纂過程の資料を客観的に分析して詳らかにしている。公式戦史は開戦の正当性捏造や兵站失敗の隠蔽、戦果の誇張等で改竄されたと。その戦果の過大評価は日本の慢心を招き無謀な太平洋戦争への下地になったと著者は説く。なおかつその影響は隣国に対する慢心の形で現在に至ると著者は警告する。2026/03/23

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