内容説明
「命が惜しければ最高の料理を作れ!」1819年、イギリスの海辺の別荘で、海賊団に雇い主の貴族を殺害されたうえ、海賊船に拉致されてしまった料理人ウェッジウッド。女船長マボットから脅されて、週に一度、彼女だけに極上の料理を作ることに。食材も設備も不足している船で料理を作るため、経験とひらめきを総動員して工夫を重ねるウェッジウッド。徐々に船での生活に慣れていくが、やはりここは海賊船。敵対する勢力との壮絶なる戦いが待ち受けていて……。面白さ無類、唯一無二の海賊冒険×お料理小説!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
323
普段あまり読まないジャンル。書店や読メのレビューでやたら目に止まり、だんだん興味が湧いてきた。少し捻りすぎて文章のテンポを殺しているような比喩表現が若干気になり、序盤はスルスルとはいかなかったが、料理が始まったあたりから徐々に引き込まれて、終盤はかなり一気に読み終えた。物語自体はかなりオーソドックスな進行で、特段の意外性はなく、むしろマボットとウェッジウッドの関係はいらなかったくらい。肉体関係のないままの方が清々しく、マボットの格好良さも引き立った気がする。結局は料理と海賊という組み合わせの妙がすべて。2023/01/31
海猫
166
命が惜しければ最高の料理を作れ!海賊船に拉致され女船長に腕をふるう羽目になった料理人ウェッジウッド。食材も設備もお粗末な環境の中で工夫を重ねるが…。お料理がメインかな?と思い読んでたら、海賊冒険小説の要素がかなり濃い。襲撃したり戦闘があったり大乱闘場面もあるわ、意外に派手。船員らの人物像も面白いが、特に女船長マボットが魅力的。野蛮な海賊ではなく一本筋の通った人物で、彼女との交流を通しウェッジウッドの価値観も変化してゆく。19世紀前半の空気感も良く書き込まれ、ロマンスまでも盛り込み、みっちりと読ませる一冊。2022/09/16
seacalf
124
お気に入りの読友さんの感想につられて。惚れずにはいられない気っ風の良い美貌の女海賊マボットと、彼女に攫われた天才料理人ウェッジウッドが繰り広げるめっぽう面白い娯楽小説。個性際立つ海賊たちや天才科学者の敵役などキャストも粒揃い。船長の為に貴族にも絶賛された華麗な腕を振るうのだが、諸々足りない船内で知恵を絞って美食の皿を生み出す様が痛快。最初は嫌々だったはずが、マボットに蒙を啓かれ徐々に心境が変わっていく様子も良い。翻訳がいまいち読みにくかったが、そこさえ目を瞑れば休日に読むのにぴったりな読み応えある作品。2022/12/16
ケイ
119
登場人物の中の一人である料理人の名前がコンラッド。ハリー・クレッシングの「料理人」へのオマージュがあるんだかないんだか。こちらのコンラッドは、ドロドロしたお粥みたいなのしか作らず、クセが強くない。主人公の料理人であるウエッジウッドという名前も、気になるところ。さて、本書の内容だけれど、暴力と血と仁義なき闘いぶりが盛りだくさんで、一方で美味しそうな料理の描写がふんだんにあるのに、美味しそうに書かれるほどに、吐き気を催すとでも言うような香りを放つ。悪趣味だわ(どちらかといえばポジティブな意味で)2023/05/16
雪紫
106
ありったけの食材かき集め、命を繋ぎに行くのさ。1819年8月18日、雇い主を殺され海賊の女船長マボットに拉致された料理人ウェッジ。助かる手段は週に一度、豪勢な料理を作ること!!食材不足に苦労し、脱走の決意をしながらも、表紙に出た料理が早くも出来る光景がたまらない。絶望的戦いや、当時の情勢、失われるもの、マボットの背景が明らかになるにつれ、変わる心境や紡がれる料理のなんと尊いことか(味噌や醤油まで出るし)。絶望、飯テロ、和やか、そしてしんみり。物語が進むごとに息をつかせぬ、でも少しずつ大切に読んだ1冊。2023/01/16