内容説明
高齢者向け共同住宅に住む90歳のペギーが死んだ。彼女は推理小説の生き字引のような人物で、“殺人コンサルタント”と名乗り、多くの作家の執筆に協力していた。死因は心臓発作だったが、ペギーの介護士ナタルカはその死に不審を抱き、刑事ハービンダーに相談しつつ、友人二人と真相を探りはじめる。しかしナタルカたちがペギーの部屋を調べていると、覆面の人物が銃を手にして入ってきて、一冊の推理小説を奪って消えた。謎の人物は誰で、なぜそんな不可解な行動を? 『見知らぬ人』の著者が贈る、本や出版界をテーマにした傑作謎解きミステリ!/解説=杉江松恋
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
306
ハービンダーがシリーズキャラクター化されるイメージがいまいち沸かなかったけれども、少し作風を変えたことで、いい感じに収まって、文章にもノリがある。のどかで上品な英国らしい風合いが濃くなり、前作よりも登場人物に親しみやすくもなった。ミステリとしても骨格がしっかりしてきており、手掛かりの散りばめ方などは、特に良くなったと思う。説明されないままに終わった伏線もいくつかあって気になるが、水準は高め。まだまだハービンダーが続き物の主人公としては存在意義が薄く、そこを克服してくれるか期待。2022/12/12
yukaring
86
ゴシックホラー調だった前作とはガラっと変わり、海辺の街を舞台にハービンダー刑事と素人探偵3人組がミステリ好きの老婦人が死んだ謎を解き明かすストーリー。今回のハービンダーは3人組に振り回される大変な役回り😅前作のクレアも少し登場するのが嬉しい。90歳のペギーは推理小説の生き字引でミステリ作家たちに協力するほどの存在。ペギーの死後、覆面の人物が彼女の本を持ち去り別の本からは怪しげなカードが見つかる。小説に謎を解く鍵があるのか?作家やエージェントも登場し本にまつわる話も語られるミステリ愛がつまった1冊だった。2022/10/03
たま
70
この作家さん初読み。旅行に持参したら読みやすかった。章が短く読書の中断が気にならない、地の文がユーモアたっぷり、主要人物たちが好人物。知り合うとすぐパブに行って飲み物を奢りあう。インド系の女性刑事も参考人(つまり犯人候補)とすぐ親しくなり、大丈夫か?と思う。スコットランドのブックフェスティバルへの小旅行もある。『木曜殺人クラブ』の例を見てもブライトンの介護施設では東欧移民が重要な働き手で。高齢女性は元凄腕スパイと決まっているようだ。犯行の解明過程に疑問の箇所も多いが、楽しいユーモアミステリだった。2024/08/24
ひらちゃん
49
前作「見知らぬ人」のハービンダー刑事シリーズ第二弾。窓辺の愛書家そのものの老婦人が亡くなり、素人探偵が動き出す。犯罪小説好きの殺人コンサルタント、意味深なポストカード、小説家の殺人事件。老婦人ペギーに関わりをもつ三人が個性的。全部が繋がっていそうで、何がいらない情報なのか。考えながら読むのが楽しかった。三人のその後、ハービンダーの成長もまだまだ見たいので、次作も読んでみたい。2024/08/12
しゃお
38
『見知らぬ人』に続くハービンダー刑事部長シリーズ2作目。前作のゴシックホラーみたいな雰囲気から一転してコージーミステリーのような展開を見せる本作。ハービンダー刑事のキャラづけも濃くなりましたが、ミステリ作家に助言していた殺人コンサルタントの老婦人の死の真相を探る素人探偵三人組が何より楽しかったのは、それぞれにしっかり肉付けされた背景が見えるからでしょうか。しかし事件の真相に至るまでの謎が盛沢山で結局よく分からない事も残ったような…って、自分だけ?それにしても何より印象に残るのは今も続く戦争という現実。。。2023/01/17