内容説明
韓国出身の移民として生きる経験に根ざし,日本語表現の新たな地平を切り開くラッパー,MOMENT JOON.日本のヒップホップ,「外人」であること,差別語,詩人・金時鐘との出会いなど,日々の経験と思索から見える日本社会の風景を,鋭く率直な言葉で綴る.硬直した社会にくさびを打ち込む,待望にして初の著作!
目次
まえがき
1 「いない」と言われても僕はここに「いる」
2 日本語上手ですね
3 引退します.ホープマシーン.
4 井口堂から,次のホームへ
5 「チョン」と「Nワード」,そしてラップ(前編)
6 「チョン」と「Nワード」,そしてラップ(後編)
7 僕が在日になる日
8 シリアス金髪
9 バッドエンドへようこそ
10 私の愛の住所は
付録 僕らの孤独の住所は日本
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スイ
21
この先、何度も思い返すだろうと思う。 せめて私自身にそうあって欲しい。 どの章も、心を削るようにして書かれている。 その切実な言葉に、せめて向き合おうとする私であって欲しい。 そうありたい、と言うとそれは自分の意志の話だけど、無意識のところからそういう私でありたいのだ(ここは意志)。 人をこんな苦しめ方をしているのがこの社会なんだ…。2022/01/20
しゅん
13
モーメントの音楽には前から惹かれていたし、切実さのようなものも感じていた。具体的な彼の立ち位置は知らなかった。気候変動の問題について、あらゆる立場を描いたうえで絶望に終わりまで留まるスタンスはなかなか書けないんじゃないかと思った。誰もが過ぎ去るポイントで留まる。あらゆる不正確なラベリングを断ち切るために「移民」という言葉で自らを定義するモーメント。「移った」からゆえに、「留まる」力を蓄える。その力が「重さ」になってしまうことに悩みながら。金髪にしたことへの懊悩が綴られる短い章が、なんだか好きだった。2022/03/10
モリータ
9
◆2021年11月岩波書店刊。初出は岩波書店のWEBマガジン「たねをまく」上の同名の連載記事(2020/11~2021/9)+『図書』収録の「僕らの孤独の住所は日本」◆著者Moment Joon(本名キム・ボジュン)は1991年生、2010年に阪大文学研究科に留学、音楽学を専攻しつつラッパーとして活動。1stアルバム『Passport & Garcon』(2021)の評価は高い。その収録曲「TENO HIRA with Japan」には金時鐘の「夢みたいなこと」の朗読が挿入されている(本書7節で記述)。2023/04/19
kuukazoo
9
著者は韓国出身、19歳で日本に留学、現在は日本語で歌うラッパーとして日本で活動する。日本在住外国人あるあるエッセイにしてはしんどいと思ってしまうのは彼が自分の居場所を切実に日本に求めているからなのか。初めて読んだ時は正直うんざりしたが読み返してもし彼と同じマイノリティな立場だったらと思うと理解できることもあり、せめてそういう人達の良き隣人でありたいと思った。あえて母国語ではない言語で思いを伝える困難を、日本語で事足りる恩恵が当たり前な自分は忘れがちなので、せめて英語くらいはできるようになりたい。2022/03/09
Jessica
7
私にとって新しいものは得られなかった本作でした。 「日本語上手ですね」や、国別ステレオタイプは確かに同じ国に長くいたら耳につくようになるかと思いますが、正直他の諸外国での移住した際も残念ながら同じようなことを言われます。 フランス語然り、もう何十年も話している英語も「お上手ですね、どこで習ったんですか」と各言語を母語として使用される方に言われるので、少なからず日本だけじゃないけど…と思わざるを得ない点が多く感じました。2022/12/13