Lの運動靴

個数:1
紙書籍版価格
¥1,980
  • 電子書籍
  • ポイントキャンペーン

Lの運動靴

  • 著者名:キム・スム/中野宣子
  • 価格 ¥1,799(本体¥1,636)
  • アストラハウス(2022/07発売)
  • 冬の読書を楽しもう!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~1/13)
  • ポイント 480pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784908184345

ファイル: /

内容説明

1987年6月、韓国の民主抗争の最中、警察の発砲した催涙弾によって命を失った20歳の青年、大学生の「L」。28年後、彼のものだとされるボロボロの片方だけの運動靴が、修復家の元へ持ち込まれる。
「L」とは誰なのか? 運動靴の「欠けら」を修復する行為にどのような意味があるのか? 個人の「消せない記憶」とは? 人が生き、死して残す「物体」に、そしてその「修復」に、果たしてどのような意味があるのか?
主人公の美術修復家の視点を通して、静謐な時間の中で語られる「物質」と「記憶」をめぐる物語。現代アート作品の修復に関するエピソードが挿入され、修復室を訪れる寡黙な人々の人生が断片的に語られ、読者は静謐な美術修復室で繊細な思考を主人公とともに体験する。【モチーフ】
モチーフとなっているのは、以下のような事実。「L」こと李韓烈の運動靴の復元を知った作者が緻密な取材をへて創作した物語である。《李韓烈(イ・ハンニョル)は、1987年6月9日、延世大学で開かれた「6.10大会のための決意大会」のデモの最中、警官が発射した催涙弾に頭を打たれ、1カ月間死境をさまよい、7月5日、20歳で亡くなった。 彼の犠牲は、大統領直接選挙制の実現を目指す6月民主抗争の導火線となり、民主化運動の犠牲の象徴として広く国民の関心を集め、国民葬で行われた葬式には150万人が集まった。当時、彼が履いていた27.0センチの白い「タイガー運動靴」は、右側の片方だけが残されており、2015年、彼の28周忌を前に、美術品復元専門家のキム・ギョム博士の元に復元作業の依頼が寄せられた。キム博士はさまざまな葛藤を抱えながら、最新の美術品復元の技術をもってその運動靴を3カ月かけて復元した。現在、運動靴はイ・ハンヨル記念館に展示されている。彼が登場する映画作品にカン・ドンウォン監督「1987、ある闘いの真実」(2017)がある》

目次

第一部
第二部
 参考文献と引用について
感謝の言葉 キム・スム
訳者あとがき 
失われた人、なくした物たちへのオマージュ 中野宜子

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

星落秋風五丈原

26
小説というより心象風景を綴ったエッセイみたいでした。まず冒頭のエピソードでぶっとんだ。とんでもないもので芸術品作る人がいるな。2022/12/11

あおでん@やさどく管理人

22
【第47回やさどく】美術品修復の世界に初めて触れた気がするが、「どのように」修復するかだけでなく、「どこまで」修復するかというのが重要なのだと思い知る。ひとつしかない品だからこそ、失敗は許されない。美術品修復の繊細さ、そして息を詰めるような作業の様子が伝わってきた。2024/05/05

二人娘の父

12
翻訳家・小山内園子さんがNHKラジオで語っている「カルチャーラジオ 文学の世界 “弱さ”から読みとく韓国現代文学」で紹介された作品。Lとは李のローマ字表記Lee頭文字。靴に焦点を据えたこと、そして何よりも記憶とはを正面から描いている点に感銘を受けた。韓国・朝鮮社会が負ってきた歴史は、それを記憶し伝える人たちがいるからこそ、隣国の私にも届いている。そんな単純な事実の背景にある人々の心の動き、苦しさ、想いを感じることができる作品である。素晴らしい韓国文学に、また出会ったのだ。2023/03/19

たなべそら

11
運動靴を修復するという、あまり普段目にしたことのない題材。修復家として、Lの運動靴を修復するかどうかの心の葛藤が、そして修復家としての矜持が、静かに伝わってくる。繊細なものを修復するという、根気のいる作業の連続から生まれる緊張感。修復家が真摯にLの運動靴と、その時代を生きた人達の歴史と思いとも対峙していることをひしひしと感じる。文章を読んでいるだけなのに、まるで自分がその場にいるような気持ちになる不思議な感覚。今まで読んだことのない世界観を堪能。秋の夜長に物事をじっくりと考えたい人にオススメの一冊。2022/09/04

spatz

11
暗い場所に光が差し込んでいるような色合いの画面に置いてある断片のようなものは、その靴なのだろうか。たくさんの断片的な物語が組み合わさった、寂しげな物語だった。Lとは誰なのか。解説や訳者あとがきによれば、<李韓烈(イ・ハンニョル):1987年6月9日、延世大学で開かれたデモの最中、警官が発射した催涙弾に頭を打たれ、約1カ月間生死をさまよい、20歳で亡くなった>。倒れた彼の写真は世界中の人の目に触れ、民主化運動の象徴的存在だという。 #NetGalleyJP2022/06/21

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/19596404
  • ご注意事項