内容説明
鬱蒼とした森に覆われた謎の施設で、何不自由ない生活を送っていたサブロウ。
ある日彼は、自分が何者であるかの記憶すらないことに気づく。
監獄のような施設からの脱出は事実上不可能、奇妙な職員は対話もできず、どこか不気味なロボットのようで……。
サブロウは諜報担当のエリザ、戦略家のドック、メカニックのミッチと協力し脱出計画を立ち上げる。
脱走劇の末に彼が直面する、驚愕の真実とは?
鬼才・小林泰三の遺作となった脱獄SFミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
絵
21
いつも、頭の中で登場人物の風貌を想像しながら読むのですが、この本の主人公(100歳前後)はどうしても想像できなかった! 謎の施設からの脱出、協力者、記憶。 展開と納得感がすごかったです。 未来からの脱出というタイトルが最後にストンと腑に落ちました。2024/07/05
オヤニラミ
17
未来のSF。人が作り出したコンピューターが更に発達したAIは人類滅亡を食い止めるべく、生き残った人類を効率的に存続させるために施設を創設。精神的肉体的に老化措置を施された主人公のサブロウは自分の存在自体に異変を感じ、この施設からの脱走をはかる…施設の中で仲間を作りアンドロイドに支配されている事に気づいたサブロウ達はAIと相対するが、全ての行動は人類滅亡を食い止めるために施された処置の一つなのか!?そして人類自らが発明したコンピューターに支配されると言う事も世の摂理なのか😌隠れた壮大なテーマが恐ろしいです2023/06/22
活字スキー
17
【みんなが力を合わせればいつかは脱出できる】記憶を失くした主人公が断片的な手がかりから必死に状況を推測して困難に立ち向かおうとするヤスミンお得意のパターン。スリリングだしショッキングでもあるけれど、ホラーではないと思う。やっぱりヤスミンはSFの人だよ。どこかおかしな老人ホームからの脱出計画がいつの間にやら貴志祐介『新世界より』や山本弘『アイの物語』、そして映画『マトリックス』を混ぜ込んだような悪夢的未来に飲み込まれてゆく。ヤスミンからの最後のメッセージは、すごく真っ当なSFエンタメだった。2022/08/16
ちゃちゃまるり
16
初読み作家さん、だけど初読みが遺作だったとは知らなかった。表題と表紙のイラストからSFものをイメージしていたら、まさかの100歳の認知症の疑いのある老人が入居している施設からの脱出を企てている話だとは。何を読まされているんだろうと読み進めていくと中盤から大きく転換し期待を上回る近未来SFのストーリー。諦めず最後まで読んで良かった。。2025/01/17
nil
15
小林泰三の脱獄SFミステリ。やっぱり小林泰三のSFはいい。記憶がなく、施設から出ることも叶わず、日記に残された暗号に謎の”協力者”の影、小さな驚きと大きな謎で読む者を惹きつける序盤。各方面に特化した仲間たちと計画をたて、命懸けの脱出劇を繰り広げるスリリングな中盤。意外な真相とスピード感ある展開にラストまでノンストップで読ませる終盤。堪らねえ。プロローグとエピローグの繋がりもサブタイトル込みでめちゃくちゃよかった。ある種、らしくない結末も好き。いつまでも一番好きな作家です。『記憶破断者』もまた読みたいなあ。2022/08/07