ナイフを胸に抱きしめて

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ナイフを胸に抱きしめて

  • 著者名:八重野統摩【著】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 新潮社(2022/07発売)
  • ポイント 18pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784103546917

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内容説明

父は、私達姉妹が幼い頃、外に女を作って家を出た。女手一つで私達を育てた母は、過労がたたって数年前に亡くなった。すべて忘れて過ごしていたはずなのに、唐突にあの女が現れた。可愛らしい女の子の母親として。私はあの女を許さない。私達の家族を奪って、自分だけ幸せになるなんて! 怨讐と贖罪の長編ミステリ。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

のぶ

81
何とも切ないミステリーだった。主人公の柳川和奈は小学校の教員で高校三年生の妹、莉緒と一緒に暮らしている。莉緒が小二の時、父親は不倫相手を選んで家を出ていき、その後昼夜を問わず働きづめだった母親は、3年前に心筋梗塞で死去している。妹と2人、静かに生きていくことだけが和奈の願いだったのに、あろうことか新しく担任した授業参観で、父親を奪った不倫相手の西井千賀子に出逢ってしまう。それからしばらくしてある事件が起こる。物語はその事件の真相を突きとめるべく進行するが・・。怒りと悲痛な思いが全編に漂っていた。2022/10/18

sayuri

66
人間に憎しみという感情が存在しなければ、どれだけ生きやすくなるだろう。主人公は小学校教諭の柳川和奈。二年生のクラス担任を受け持っている。ある日の授業参観で目にした母親はかつて自分達家族から父親を奪った女性だった。嫌な記憶に蓋をするように生きて来た和奈にとって最悪の偶然。再び蘇る憎しみの感情。法律で裁く事が出来ない行為だからこそ、どこにも持って行き場のない和奈のやり切れない思いに共感する。だが憎悪を復讐に変えた所で、復讐も憎しみも連鎖し続けるだけだ。ラスト二頁で明かされるタイトルの意味に胸が締め付けられる。2022/09/10

ナミのママ

57
「あなたはいま、幸せですか?」この言葉がとても深く残っている。10年前に父は家を出た。3年前に母は死亡した。高校生の妹と暮らす小学校教員の和奈。ある日、授業参観の教壇に立った時に、対面する父兄の中にかつて父を奪った女性を見つける。その驚愕たるや、どれほどだっただろう。大人の不倫、離婚がのちのちまでも子どもに与えた影響・憎しみの感情が恐ろしい。『ペンギンは空を見上げる』(坪田譲治文学賞受賞)とは違って毒があるなぁと読み進めたが、哀しみの最後はタイトルの意味がわかる、綺麗な作品だった。2022/10/30

rosetta

38
★★★★☆初読みの作家さん。ペンネームと表紙のイラストからかなり甘く見ていたが、読んでみたら素晴らしく良い話だった。なんだかなぁと思っていたタイトルも最後まで読めば感動できた。10年前に父を奪った女の娘が自分の担任するクラスの児童になった和奈。母は心身の過労から三年前に亡くなった。父も母も奪った女が幸せな母親として現れたことに和奈の心は乱れた。娘の命を助ける事を条件に自殺を強要した。人物の心理が無理なく描かれていて心に染みる。許せない気持ちと堪えられない気持ちが祈りとなり叫びとなる。これは拾い物だった2022/10/13

よっち

37
外に女を作り家を出た父。女手一つで姉妹を育て、過労で数年前に亡くなった母。妹・莉緒は受験生となり、教員となった姉・和奈は可愛い女の子の母としてあの女に再会する怨讐と贖罪のミステリ。お互い忘れかけていた相手が、小学校の授業参観で担任と児童の母として偶然再会する悲劇。思い出してしまった許せない想いからの法で裁けない相手への罰、そこから自殺への疑問を拭えない刑事との駆け引きが続く展開で、最後は何ともやりきれない結末でしたけど、心のナイフを自覚する千賀子の娘こずえと、そんな彼女に寄り添う恭平の存在が印象的でした。2022/09/06

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