内容説明
『戦艦武蔵』『破獄』などの作品で知られる作家・吉村昭(一九二七―二〇〇六)は、公私ともに独自のスタイル貫いた。「一流料亭より縄のれんの小料理屋を好む」が、「取材のためのタクシー代には糸目をつけない」。「執筆以外の雑事は避けたい」一方、「世話になった遠方の床屋に半日かけて通う」。合理的だが義理人情に厚く、最期の時まで自らの決断にこだわった人生哲学を、吉村自身の言葉によって浮き彫りにする。
目次
第1章 毎日の暮らしの中で――日常の作法
第2章 これは小説になる、を探して――仕事の作法
第3章 生活の中に文学を持ち込まない――家庭の作法
第4章 食と酒と旅を味わう――余暇の作法
第5章 幸せだなあ、と毎朝つぶやいて――人生の作法
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レモングラス
97
不要な摩擦、トラブルを遠ざける吉村さんの生き方は何度か読んでいても学ぶことが多い。生きているという実感は、確実に死の瞬間がやってくるという前提の上に立ったもの。病期見舞いはしない。死顔は見ない、見せないの章に書かれているレコードディレクターの書面による別れが印象深い。「逢えば現世への未練が残りますので」とのご本人からのお手紙と、永眠しましたという妻の挨拶文。遺志により葬儀は行わず、ご厚情に感謝し‥‥と綴られ、理想の死と。吉村さんの遺言にも、弔花、弔問辞退。弔電、お悔やみの電話、書簡には返事を出さないこと。2024/01/14
fwhd8325
62
吉村昭さんの姿が見えるようです。素敵な一冊でした。作品の感想にはならないけれど。今まで吉村さんの作品を読んできてよかったと思いました。私の場合、迷ったら吉村昭なのです。作品へのこだわりでは「最初の一行が決まるまで万年筆を持たない」とあります。著書の中では作家は演者と表現していますが、演者よりも演出家に近いのだと思います。昭和の時代には、ここで紹介されている吉村さんのような大人がたくさんに多と思います。今は遠い昔のことなのでしょうか。2022/07/25
mondo
37
谷口佳子さんの「吉村昭の人生作法」、早速読みました。まさしく人間"吉村昭”が凝縮された書です。人との付き合い方、酒の飲み方、仕事の流儀、最期の選択など、こだわりを持った人生観は、読み手の背筋をピシッとさせます。それを味わいたいと私は吉村昭のエッセイの冊数を重ねています。エッセイを通じて、吉村昭と対話しているような気持ちになってくるのです。 この書を読み、谷口佳子さんの言葉に借りて、あらためて、吉村昭に出会ったように感じています。吉村昭ファンには、堪らない一冊になるのでは。2022/06/15
Cinejazz
16
気配りの達人、厄介なトラブルからは、うまく距離をおくという処世術、“世の中お互い様” “人間は神様ではない”という、相手を咎めない寛容の精神、“所詮は気持ちの持ちよう”という、ある種の諦観の持ち主・・・『戦艦武蔵』『関東大震災』など高名な作品を発表し続けた作家・吉村昭氏(1927-2006)の、合理的だが義理人情に厚く、最期の時まで自らの決断に拘った人間・吉村昭を浮き彫りにした、筆者<谷口桂子>さん渾身の人物像評伝。 〝私は、歴史上著名な人物を主人公にする小説を書くよりは、全く世に知られてはいないが、↓2023/12/05
Ezo Takachin
15
祖父の家にあった「戦艦武蔵」を読んで以来、私の蔵書記録の中では断トツの58冊(たぶんそれ以上)を読んでいる。 ちなみに2位は司馬遼太郎氏の27冊。3位は宮脇俊三氏の19冊。 今後の人生においても吉村氏を超える作家に出会うことはないのではないだろうかと思っている。 どの作品も私にとっては読みやすく、作品の世界にどっぷり入り込み、歴史の奥深さを知ることができた。 また、氏の人生の流儀、仕事の作法などひと際こだわりの強い作家でもあった。 吉村昭を知るには笹澤信氏の「評伝 吉村昭」と共に手元に置きたい1冊である。2022/06/15
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