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内容説明
『ポーの一族』『トーマの心臓』『11人いる!』『イグアナの娘』…1949年生まれの萩尾望都。革新的な少女漫画家の中で常に筆頭に挙げられ、時代の先端で新たな表現を切り拓いてきた。美しく繊細な少年少女の描き手であると共にSF作家であり、ジェンダー、多様性、親子関係等について理想を更新させ続けた表現者だ。作品の鑑賞と活躍の軌跡、また小松左京や橋本治を始め「誰がどう論評してきたか」を通し魅力を存分に伝える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
118
萩尾望都は目につく限り読んできたが断片的になりがちで、作者の意図を汲んだり作品成立のプロセスを把握しながらとはいかない。家にある限りの萩尾本を集めて取り上げられた作品を参照しながら読んだが、映画やヘッセの影響、竹宮惠子との葛藤に絵のテクニックなどを明快に解説し、親子関係やジェンダーなど時代の抱える問題の影響も指摘して「なぜ萩尾さんはこの時期のこの作品を描いたのか」が系統的に理解できる展開だ。漫画史上での立場や文学的な方向性にも目配りを怠らず、戦後日本の代表的な表現者として萩尾望都を位置付けようとしている。2022/08/28
ばたやん@かみがた
110
《萩尾望都―戦士・止揚者・女神》長年、SFを初めとするサブカルチャーの作品を読み解き、またそれらについての膨大な論評を渉猟してきた著者が「萩尾望都」という超巨星に挑みます。50年を超える彼女の画業について著者が得意とする歴史的考証に基づき見事にその美質・今日的意義を浮かび上がらせていく。その際、竹宮惠子・増山法恵らの党派的姿勢が明らかになり、そのことが巨星の持つ①自由と対等性への希求②対立するもの同士の止揚③未来へ向けた祈りなどの特質とは鮮やかなコントラストを成しています。(1/7) 2022/11/06
ぐうぐう
46
残念な一冊だ。「はじめに」の中で、萩尾望都の革新性を伝えようとして、他者を安易に引き合いに出す手法に危うさを覚えたのだが、予感が的中してしまった。そのような下品な手法を用いる必要がないことは、萩尾の作品を丁寧に読み解き、その素晴らしさを理解していればわかりそうなものなのに。特に、24年組をめぐる考察、中でも竹宮惠子との確執を利用して萩尾の正当性を主張する章には、げんなりとさせられた(萩尾が辛い思いをして語り下ろした『一度きりの大泉の話』をきちんと読めば、(つづく)2022/08/22
阿部義彦
25
著者は自分と同年代だけあって、リアルタイムに読んだだけに、詳細に調べて書いてます。巻末には参考文献が有ります。若い頃の小松左京さんが才能に驚いてずっと気にしていた、とあります。評論家受けは良くて、橋本治、中島梓にも触れられているし何よりもSFに一章を割いてその理数的思考に私でも降参です。タイムトラベル、超能力は勿論、平行世界や未来改編まで結末も考えずにやるなんて!時代考証も厳密にこの時代の年齢なども考慮して年表まで設えるなんて、文系の私には出来ないこと。全歴史(ポー再開まで)を網羅していてかなり深いです。2022/07/17
水彩
17
萩尾望都を愛する人の論評。愛するがゆえにたくさん調べていただいて、掘り下げていただいて、満足です。色々な人が好き勝手に論評を表すが、一番しっくりする。萩尾さんは、哲学者であり、天才なのだな。そして、やはり竹宮惠子の嫌らしさが露見する。まだまだ触れていない作品が多い。彼女は枯渇することなく、深く深く表現していってほしい。2022/11/16