内容説明
小学生の頃、想いを寄せていた同級生が亡くなった。迎梅(インメー)は死への思いに囚われながら、レズビアンである疎外感に苛まれて生きていた。高校時代の淡い恋、そして癒えない傷。日本に渡り、名を変え、異なる言語を使う彼女を苦しめ続けるものとは何なのか――。第60回群像新人文学賞優秀作にして、芥川龍之介賞受賞作家・李琴峰のデビュー作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆきらぱ
34
台湾、日本、オーストラリアが新鮮に描かれていた。 挟み込まれた漢文も、そして頁の脇の注釈ですら異国ムードあって良かった。 「彼女」はこれから強くなるのだろうか? ラストも美しい。 ただ同僚の絵梨香の描写が、この前読んだ「おいしいごはんが食べられますように」の芦川同様、弱そうでいて強い類型的な女の子に描かれていて(またか)と思った。この強い、というのはちゃんと男を捕まえるという事。そしてこの強さは愚鈍さからくる、という仄めかし。これがたまらなくイヤミ。そんな風に人間の一面を切り取るので話の厚みが減る。2022/08/24
tomoka
6
映画『アデル、ブルーは熱い色』を思い出した。2022/08/14
こけこ
4
漢詩の引用がアクセントになって、いいと思った。主人公はどんどん孤独になっていくが、最後のどんでん返しにびっくり。舞台の上の舞は、ほんとうに一人だけだったのだろうか???2024/10/24
Decoy
3
素晴らしい。救いのない、暗い話になっていくのかと思いきや、中国の古典も引用した(この作家にしかできない個性で、極めて効果的)、流麗な文体(日本語ネイティブでない作家の文章とは、信じ難い)で、悲惨と言っていいほど辛い話なのに、スルスルと読ませる。「衝撃のデビュー作」の惹句に偽りなし。他の作品も、読みたい。2022/10/02
にゃほ@灯れ松明の火
2
高校生のときに読んだ本を台湾へ行く機会があったので、再読。 主人公を取り巻く死の気配の描写がとても丁寧で読んでいてこちらも苦しくなってしまう。 ただ、1回目に読んだときよりも絶望感を感じなくなっていた。泣きながら読んだ1回目よりもすんなりと希望を持って読めたのは私の心境の変化か環境の変化なのかなんなのか。2024/12/04