内容説明
ルソーの「一般意志」は「社会契約」の締結により生まれた共同体の意志であり、正義の基準、法の源、何より自由を保全する原理とされるが、共同体に君臨するもののようにも思われてきた。本書では、「一般意志」が実は「特殊意志」によって侵食される脆弱なものであり、「統治」によって防衛されなければならないことを明らかにする。
目次
凡例
はじめに
1 本書の主題
2 どのようにルソーの「統治」は論じられてきたか
3 ルソーの「統治」は「法の執行」、または権謀術数か
4 本書の構成
第I部 「統治」とは何か
第1章 フーコーにおける「統治」
1 なぜ、「統治」が問われるのか
2 「統治性(gouvernementalite)」とは何か
3 フーコー的観点から「統治」を問う意義
第2章 「統治」の系譜
1 Regimenから「統治」へ
2 「統治」の変容
3 一八世紀に見られた変化
第II部 ルソーの「統治」
第1章 『政治経済論』における「統治」
1 『政治経済論』とeconomie
2 「エコノミー」としての国家の「統治」
3 三つの規則
第2章 人の「統治」
1 人の「統治」とは何か
2 「政治体」における教育
3 「政治体」における娯楽
4 宗教は「内面」の「統治」の手段の一つなのか
第3章 「財」の「統治」
1 ルソーのいわゆる経済論に関する先行研究
2 仮想敵としての「財政制度(systeme de finances)」
3 財の「統治」のさまざまな手段
第III部 「一般意志」と「統治」
第1章 なぜ「一般意志」は防衛されなければならないのか
1 「一般意志」とは何か
2 「一般意志」の絶対性と不可分性
3 「一般意志」の脆弱性と複数性
第2章 いかにして「一般意志」を防衛するか
1 脆弱性の補完
2 「複数性」の維持――「財」の偏在の是正
第3章 「市場」と「一般意志」
1 一八世紀に出現した「統治」の二つのタイプ
2 「市場」を防衛する「統治」
3 「一般意志」を防衛する「統治」
おわりに
謝辞
参照文献一覧
人名索引
事項索引