内容説明
民のため、国の未来のため、巨大な御仏を造りたい――聖武天皇の理解者は、皇族以外から初の皇后となった光明子ただ一人。奈良の東大寺大仏に秘められた夫婦愛と葛藤の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤枝梅安
69
正倉院宝物のうち、行方不明になっていた一対の剣が、東大寺大仏殿で発見された。研究者でもあるこの作家は、光明皇后がこの剣を宝物殿から持ち出し、大仏殿に移したという解釈を基に、聖武天皇と光明皇后の愛と苦難を、天皇家と藤原家代々の繋がりという舞台の上で描いている。東大寺大仏については帚木蓬生さんの「国銅」が圧倒的な存在感を保っているが、この小説は、天皇と皇后の不安や苦悩を短歌や史実に寄せて綴っている。行基、吉備真備、藤原仲麻呂など、日本史の教科書に出てくる人物たちが登場し、「歴史教養小説」として楽しめた。2014/06/26
巨峰
65
自分たちだけのためだけじゃなくて後世に残るものを。。。彼女たちが作った奈良の大仏が今でも多くの人を奈良に呼び込んでいると思うと感慨深い。聖武天皇・光明子をあまりに純粋に描き過ぎたため、物語に起伏がなく盛り上がりにかけるけど、もしかしたらこうだったのかもと思わせました。2017/11/11
のほほん@灯れ松明の火
23
この時代の小説を読んだのは始めてだったのですが、首と安宿が とっても仲睦ましく書かれていたせいか、とっつきやすくて読みやすかったです。地震に疫病、ただでさえ国が貧窮にあえいでいる時に、こんな無謀な…と思わずにいられませんでしたが、聖武天皇と光明皇后の2人の一大事業である大仏様が、今の世にも形となって残っているということが、改めてすごいことだと思いました。行基にすごく興味が湧きました。大仏建造の時代に行基の存在そのものが奇跡のようです。この時代の別の話も読んでみたいなぁと興味をかきたてられた読後感でした。2013/03/06
むつぞー
21
災いは自分が至らぬから、天変地異が起こるのだと悩んだ聖武天皇。 一方、皇族以外で初めて皇后の座についた安宿にも悩みはありました。 だからこそ民のために、国のために、巨大な御仏を造ろうとした心情が分かりやすくあります。 この二人の天皇皇后というイメージ以上に、その二人の夫婦の暖かな愛情を描かれます。このあたりがとっても良い感じです。 その二人の娘でありながら皇太子となった阿倍皇女の、母親である皇后に向ける複雑な心境といったものも描かれて、そう考えるとこの作品はちょっと特殊な家族小説でもあるのかもしれません。2013/01/07
宇宙猫
18
★★★ 光明皇后が理想を追う夫を支えるも、娘に反発されて心配したり悩んだりする話。わざわざ歴史上の人物にしたのに内容が薄い。2018/12/21