内容説明
伝説の句集『脱衣場のアリス』から21年、待望の新作。
〈私〉たちの言葉で、世界をはみだし続ける川柳作家・なかはられいこ。地に足のついた場所から光をともなって描かれる作品をベースに、アメリカ同時多発テロ事件をテーマとして高く評価された連作「2001/09/11」を含む、全219句を収録。
作品のことばに、不思議なひかりがやどり、あるいは、切なげなかげりが広がる。それら全てを吸収して、作品の世界の豊穣に繋げたのが、本書『くちびるにウエハース』だ。実に二十一年ぶりとなる第三句集である。(荻原裕幸「解説 無敵のアリス」より)
目次
◆目次
ぼくの女神
無敵
ウエハース
非常口
2001/09/11
狩野派の雲
とと、とと、と
魏呉蜀
なんか、ごめん
終わる平成
式次第
塩、胡椒
解説 無敵のアリス 荻原裕幸
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
46
なんだろう、この距離感。現実と空想の間。ユーモアと生真面目さの間。過去と今と未来の間。こんなに自由に飛びまわれるのは、いいなあ~。時として、形式からも自由になることで、伝わるものが全く違ってくる。こういう精神に近づこうと思う。2022/10/20
双海(ふたみ)
14
伝説の句集といわれる『脱衣場のアリス』から21年、第三句集。2010年、朝日新聞「東海柳壇」選者。「約束を匂いにすればヒヤシンス」「完璧な春になるまであとひとり」「目覚めると川の匂いのするからだ」「つまさきは波打ち際の夢をみる」2024/02/22
駒場
9
川柳や俳句の鑑賞能力が著しく低い人間が図書館でたまたま出会った本で、わからないところもありつつ楽しく読んだ。 完璧な春になるまであとひとり/鉄棒に片足かけるとき無敵/空と呼びたいもののいくつかメモをとる/雨の音かたち整う瞬間の/プルトップ開ける溢れる星条旗/くりかえしビルが崩れて秋になる/恙なしときどき星に水遣って/さよならは橋の長さを厳守せよ/看板の欠けた一字はたぶん春/なかんずく喉いっぱいの冬野原/家々の明かりを編んでゆく仕事2023/02/11
sasa-kuma
7
何回も読みたくなる。2022/09/20
せっか
3
川柳の句集。「右脳から左脳にかかる冬の虹」「ビル、がく、ずれて、ゆくな、ん、てきれ、いき、れ」「USA、USAと秋の蝉」川柳は五七五。季語はなくてもOK。俳句でも虚の世界を詠む方もいるのでとても近い世界観かな。俳句よりも自由な感じ。2022/10/26