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内容説明
小説家の創造力をあざ笑うように起きる数々の奇っ怪な事件。自浄作用を全く失ってしまった政財官の腐敗。本来、安らぎの場であるにもかかわらず、もはやその役目を果たさなくなってしまった家庭……。外国に例を見ることのない日本人固有の勤勉さや倫理観は、いったいどこに消えたのだろうか。そして、これからの日本と日本人は、どこに向かって歩もうとしているのだろうか。その方向性を探る一つの手だては、歴史を見つめ直すことにある。本書は日本人の宗教観、精神構造研究の第一人者として活躍する著者が、貴族的価値に支配された古い日本を壊した蓮如と、現代につながる新しい日本を創造した人物として信長を取り上げ、日本史を画した二人の思想と行動を通して、現代という時代を見定めることに挑んだ歴史評論である。構造改革が叫ばれるいま、日本人の意識が変わらぬことには掛け声に終始することは明らかだ。日本人とは何かを考えさせられる一冊である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
62
本書で著者は、<鎌倉仏教が、日本における宗教改革の主たる担い手であった>という通説に異を唱え、<応仁の乱から石山戦争いたる15~16世紀こそが、真に宗教改革の名に値する時代だった>と力説しています。<宗教に対する蓮如のポジティブな構想と、同じ宗教に対する信長のネガティブな構想が鍵十字のような形でがっちり手を結び、その後の日本人の宗教意識を形成する動因となった。/今日における日本人の世俗的な自己認識、もしくはステロタイプ化した無宗教アイデンティティの形成過程をかなりの程度説明するのではないだろうか>と。⇒2023/01/19
うえ
2
九人男子のいた「蓮如のように、血縁を浸透させ空間化させるだけの時間的ゆとりが(十一子いた)信長には残されていなかった。血縁というくさびを仏法領の内部に打ちこむ上で蓮如は周到な計略を巡らしていた」「信長の目標は「教権」を叩きつぶし「俗権」の領分を広げること」その強行策が「以後三百年、日本人の宗教に対する態度を淡泊にした」「蓮如は国家を手放すことで15世紀の生き仏」になり「民衆宗教の基盤を築くことに成功した…対して信長は宗教を排除した国家の内部で自らを生き神に祀りあげる野心を顕にした。が、歴史は非情である」2015/04/14