内容説明
医療現場、原子力発電所等、一つ間違えば大きな事故が生じうる組織において、学習はどのようになされるか――。失敗を含む「日常的実験」の繰り返しこそ、現場での学習の資源である。本書では、このリスクを伴う試行錯誤を許す空間を「学習の実験的領域」と呼び、法的・経済的諸条件に影響され、組織ごと、状況ごとに変動するその不安定なありようを明らかにする。フィールドワークや豊富な民族誌的資料をもとに、学習を社会科学のテーマとして扱い、状況的学習論といった従来の理論モデルを超える新たな枠組みを示した。事故と安全、科学技術、組織といった具体的文脈のもとでの学習を考える、数々の概念装置を与える書。
目次
はしがき
文庫版のための序
Ⅰ 実践から日常的実験へ──学習理論の再検討
第Ⅰ部の序
第1章 野生の知識工学──「暗黙知」の民族誌のための序論
1 インタビューの限界、あるいは語られない知識
2 知識の分類学
3 暗黙知の形式化とその批判者
4 エコロジーとシミュレーション
5 「熟練の社会理論」の環境的制約
結語 民族誌的研究の薬用と限界
第2章 状況・行為・内省──共同体神話を超えて
序 状況概念の系譜学
1 合理性の自己限定
2 状況と行為──プラグマティズムの伝統
3 状況と内省(反省)
4 熟練と環境
5 変化する環境と熟練の失敗
6 共同的行為としての熟練
結語 プラクティスから日常的実験へ
第3章 空洞の共同体──教育研究における徒弟制モデルの功罪
序 教育と学習を問い直す
1 システム分化としての学校
2 学校への短期療法的アプローチ
結語
第4章 学習の実験的領域──試行・コスト・免責
序 学習と組織のよじれた関係
1 学習理論再考
2 現場学習を問い直す
3 徒弟制から実験室へ
4 学習の実験的領域の存立条件──制約の諸形式
結語 そして研究プログラムのために
Ⅱ 組織というレッスン──リスク・知識・テクノロジー
第Ⅱ部の序
第5章 組織、リスク、テクノロジー──高信頼性組織研究について
序
1 安全性、事故、組織事故
2 事故研究と高信頼性組織研究
3 高信頼性組織研究における様々な知見
4 原子力発電所の組織的特殊性
5 高信頼性概念の一般化とその問題
6 リスク社会論と組織論的アプローチ──その共通点と相違点
結語
付論 高信頼性組織研究と軍隊モデル
第6章 アメリカン・アサイラム──精神病院民族誌と科学社会学の起源
序
1 『アサイラム』の衝撃
2 精神病院の民族誌──そのアウトライン
3 精神分析という「問題」
4 アメリカにおける精神分析
5 精神分析の病理
6 精神分析から科学社会学へ
7 『アサイラム』の特異性
結語 精神病院民族誌の教訓
第7章 野生のリスク管理──病棟のダイナミクスを観る
序 リスクの二つの顔
1 リスク知覚の集合性
2 判断の専門性と日常性
3 手段の正当性問題
4 保護室という空間
議論と結語 リスクの曖昧な境界
第8章 救命救急センターにおける組織と学習
序
1 研究対象の背景
2 救急医療の日本的特性──欧米との比較
3 組織の三層構造と脆弱性
4 学習、安全、リスク
5 安全の制度的装置
6 防御壁稼働のための前提条件
7 防御壁の限界と失敗の学習
8 教育と安全の齟齬
9 組織間構造の様式
10 タスクとカップリングの構造
11 組織としてのセンター
結語
あとがき
文庫版のための解題
文庫版へのあとがき
解説 周縁者が参加できる組織の条件(熊谷晋一郎)
文献一覧
索引
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