内容説明
物静かな風呂敷職人の父、引き揚げ者だけれども元気いっぱいの母、そして優しいお姉ちゃん。京都の下町に生まれた<むっちゃん>はご近所さんや幼稚園・学校の先生にかわいがられながら大きくなった。そんな彼女が何よりも好きだったのが木琴を弾くこと。野菜やお花を持ってきてくれる白川女のおばさんや、お隣の裁縫塾のお姉さんたち、そして若くしてこの世を去った愛しい教え子の小百合ちゃん……音楽家にして稀代のエッセイストが描く「天使突抜一丁目の人たち」のポートレイト!
目次
序 うちの洗濯カゴ
第1部 天使突抜の人々
照子さんの塩昆布
花売りのおばさん
奥方のレッスン
角打ちとヴェルディ
還暦越えの生徒さんたち
満永小百合さんのこと
第2部 記憶を紡ぐ
三つ子の魂、できあがる
お前、通崎と結婚せい
マリンバ手習い、お寺から
ベートーヴェン『交響曲第七番』
アンティーク着物に魅せられて
私の文章ことはじめ
第3部 通崎家の京都百年
富山から京都へ
乾柿と銀杏
着物姿の交換手
どちらでも
三度の救急車
おわりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kayak-gohan
18
京都市には「天使突抜」という一風変わった地名がある。本著はその地名の由来、そしてそこに関わる人々との出会いと別れを徒然に綴っている。京町家が軒を連ねるところでは、地蔵盆などいくつかの行事が伝統として根付いている。また、京都の三名水は飲み水や料理用の水として使われてきたが、京都人はこれを定期的に汲みに行く。現在は梨木神社の「染井の水」だけが唯一残っていて、今でも毎朝汲みに来ている人がいる。それらには独特の空気感があり、ひとつの生活文化を形成している。筆者の語る文章の行間からもその空気感が読み取れる。2022/12/02
アリ子
7
全部読み切る前に返却期限が来てしまった。タイトルから想像していた内容とは全然違っていた。マリンバ良いね。ぜひ続きを読みたい。2023/02/26
かずくん
4
木琴奏者通崎睦美さんの最新刊。満永小百合さんのはなし泣かされるなぁ。そのはなしの中に筋がある。「通崎先生に教わっていたときよりわいことはない」は笑えるねー。2022/08/13
spike
4
読んでいて心が落ち着く、素敵なエッセイ。文章が染み込むように頭に入ってくる気がする。小百合さんのエピソードも、とても悲しい話なのだけれども、それだけでなく心を揺さぶられる文章に感動する。いい本だなあ。2022/06/19
moon-shot
2
天使突抜の地名は知っていたので、正月らしく京都の町家の伝統に彩られた生活を綴ったエッセイでも、と思って読み始めたら、だいぶ違った。京芸出身のバリバリのマリンバ奏者である通崎さんとその身近な人々の前向きな生き様に圧倒されました。七十を越えてマリンバを始めたお婆さんの話や、小さい頃から教えていたのに二十代で早逝された生徒さんの話。評伝まで書いた木琴奏者平岡養一の生涯。そしてもちろん、幼い頃から負けず嫌いだった自身のこと。自分の感性を信じて、これぞと決めたらとことん突き進む姿に、新春からパワーをいただきました。2023/01/06
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