内容説明
イングランド、ウェールズ、北アイルランドとともに「イギリス」を構成するスコットランド。一七〇七年の合同法でイングランドと統合しグレートブリテン王国となったが、近年は独立を模索するなど、独自の歴史とナショナル・アイデンティティをもつ。ケルト文化、デイヴィッド・ヒュームやアダム・スミスに代表される啓蒙思想、「地酒」ウイスキー、ゴルフ、伝統衣装タータン・キルトなど多様なスコットランドを活写する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
115
奥州藤原氏が数百年間も独自の歴史と国民性を持つ王国を保ち、その王が日本の天皇に招かれ両国が統合後も完全に同化せず独立運動が根強く続いていたら。イングランドに対するスコットランドの立ち位置は、そう例えれば理解できるか。日本で東北出身の人材や文化が活躍したように、イングランド史=英国史とされてきた時代にスコットランド人が彩った英国文化の輝きは驚くほどだ。イングランドとは違うとの思いあればこそ、人口と経済力軍事力に劣ったスコットランドの力を輝かせねばと考えたのか。いわばスコットランド人のプライドの歴史書だろう。2022/07/23
アキ
109
スコットランド🏴の国旗は、聖アンドリューが殉教するとき斜め十字であったことから、ピクト族が勝利の旗として用いたのが始まり。イギリスは日本と同じ島国だが、アングロサクソンのイングランドとケルトらから成るスコットランドというルーツの異なる2つの国が存在し、700年以上も争いを続けていた事が大きな違いである。1707年グレートブリテンとして統一したが、現在に至るまで文化的な違いがみられる。個人的にはスコーンの由来が運命の石で、蛍の光の元はスコットランド民謡というのが印象に残りました。2024/03/03
榊原 香織
83
イングランド史と早い時点から絡む。ほぼ双子に思える。 清教徒革命、が教科書で習ったのとずいぶん違う。クロムウェルはフットボール(サッカー)禁止。当時のは人数制限なしで一つの玉を取り合う。そりゃ危ない。 ケルトの新年は11月1日。その祭りがSamhain→Halloween2022/09/28
molysk
76
イギリスを構成するスコットランドとイングランドは、歴史的には互いを油断ならない隣人とみなしていた。宗教がカトリック、英国国教会、プロテスタントと変遷する中で、相容れぬ立場をとることも多く、同君連合を組んだのち、スコットランド出身の王はイングランドの統治に失敗して清教徒革命を招く。1707年、連合王国成立。スコットランドのアイデンティティは消滅の危機に瀕するも、文化や学問でその存在感を世界に示すようになる。現在、スコットランドでは再び独立への機運が高まりつつある。女王の逝去で、その斥力は強まることになろう。2022/09/23
skunk_c
75
著者の専門は哲学・思想で歴史学や地域研究ではないのだが、それが吉と出ている。最初はやや硬めかなとも思ったが、スコットランド側からみたイギリス革命がとても面白かった。さらにその後に続く宗教や文化・学芸に関するテーマ別の各章が興味深い。著者は「おわりに」にも明記しているが、スコットランドという地域社会のナショナルアイデンティティを強く意識して書き進めており、それとパーソナルなアイデンティティの絡み合いを含めて、「スコットランドとは何か」という点を浮き彫りにしようとしている。こうした地域からの視点は重要と思う。2022/06/26