内容説明
近世ドイツ・プロイセンでは、領主の直営農場を農民の賦役労働を用いて経営する農場領主制(グーツヘルシャフト)が普及していたことが知られている。一方で、賦役に従事する農民は御領林の木材を安価(または無料)で得る権利をもっていた。グーツヘルシャフトの経営はこの義務と権利のあり方と密接に関わっており、19世紀の農民解放への道もその中にあったことを、16~19世紀にかけての御領林経営に関する緻密な史料分析によって明らかにする。
目次
序章 農場と森林の支配としてのグーツヘルシャフト
第1章 農場領主制の成立と森林条令(一六世紀)
第2章 荒廃農場の復旧と森林への依存(三十年戦争~一八世紀半ば)
第3章 人口成長・農場経営発展・森林経営改革(一八世紀後半)
第4章 プロイセン改革と森林賦役・林役権の持続(一九世紀)
終章 結論
あとがき
付録史料
貨幣・度量衡単位
図表一覧
史料・文献リスト
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
人生ゴルディアス
4
領主の直営農場で農民は搾取されひどい目に会っていた、という古い説をデータで反証していく流れ。またヨーロッパの領主は日本の大名と違い土地の完全な所有権を持っていたが、それ故にそこで働く農民はあれこれ面倒を見なければならず、建物の新築や補修の際の御領林からの木材提供や、家畜放牧のための権利などで譲歩する必要があり、案外経営は大変だったと。サボタージュなどもあり、直営農場は早々に諦め、世襲権を含む下級使用権を売り渡す形式が多かったりと、上からの完全な抑圧という感じでもなかったらしい話。2022/07/12
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