内容説明
長距離の長電話が好きな著者が「電話代より部屋代が安い」と気づいて始めた東京でのひとり暮らし。
コールサインが鳴り響き、楽しくも賑やかに過ぎていく。
将来を案ずる両親への葛藤、友人との尽きない話。
本を読んでひとり芝居し、天井を帚で突き破って方違え……。
才気溢れる若き小説家が愛と怒りと笑いを交えて綴る傑作エッセイ。
〈解説〉青山美智子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そうたそ
8
★★☆☆☆ 著者が東京暮らしを始めた頃のエッセイ。もっと東京での生活が書かれているかと思いきや、中身は普通のエッセイだった。とはいえ、著者のユーモアが溢れる肩の力を抜いて読めるようなエッセイで、時代的な古さはあるだろうが、内容は決して色褪せていなかった。2025/06/05
sea
3
氷室さんはきっと誰よりもまっすぐで純粋な人なんだと思うのだけれど、そのまっすぐの軌道が明らかに大多数の人と違う方向に突き抜けているからおもしろい。そのユニークさを当人がてんで気づいてないことを含め。 青山美智子さんの解説はほんとうに素晴らしく、氷室さんへの愛に満ちていて、いつかわたしもこれほど愛に溢るる言葉を届けられる相手を見つけられたら、その人にこれほど全身全霊で愛を伝えられたら、この世に思い起こすことなどないなぁと、大それたことを思った。2022/08/03
千景
3
長電話のしすぎで「この電話代払うなら東京のそこそこいい家に住めるな…」って東京に引っ越すって…長電話やばいな…と思ったけど、よく考えたら私も、LINE通話は無料だからって平気で4時間ぐらい通話してる……🤔おや? 少しずつ変わって来てるような気はするが、 しかし根本的なところはなかなか変われないのだろうか。 女が女として強く生きていくこともまた美しいのでしょうが、女も男も関係なくただ揺蕩うように生きていきたいなと感じる……。二分されるの、疲れたよー。2022/06/27
とんとん
3
祖父の葬儀の準備をしているときに見た、不自然な鬘を付けた男性。何年も経って、その男性の姿が脈絡なく浮かんで来た時のことが書かれた「記憶」がすごい。〈田舎には不思議な逞ましさ、生命力とでもいうべきものがあって、仮通夜だろうと本葬儀の席だろうと、目引き袖引きのうわさ話や人物批評は常に、生き生きと行われる〉……こんな文章なかなか書けないです。2022/07/10
ズグリーブ
2
いい話よりトホホな話を選ぶセンスがすてきだ。個々の描写も生き生きとして秀逸。多武峰で遭難しかかったときチェルシーの包み紙に励まされる心境とか、自分の体験のようにありありと思い浮かぶ。p77-78「そのうちにインカム式の携帯用超小型電話ってできると、おもしろいわね」「今よりもっと、排他的な世の中になるわね。日常生活してる時も、現実無視して、興味のある人としかしゃべってないんだもん」――。1990年の本でこれ。氷室さんはやっぱりめちゃくちゃ人間が見えている。「光る君へ」の感想とか聞きたかったなあと、つい思う。2024/05/08
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