内容説明
あの戦争をどう考えればよいのか。なぜあんなことになったのか。戦争を描いてきた小説家と戦争を研究してきた歴史家が、必読史料に触れ、文芸作品や手記なども読みながら、改めて考える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
126
ほとんどの国で国民は自国の歴史を「偉大な祖国が英雄的な戦いの末に栄光を獲得する」物語として受け取る。そこに生きる自分たちは優れた民族であり、他国より上なのだとの感覚が自然に身につく。その明確な表れが戦争での勝利であり、帝国主義時代では領土獲得と強大国建設に直結した。遅れて列強入りした日本も同じ道を進み、政府も愛国心を高めるのに不都合はなかった。しかし物語を信じた国民が自国こそ世界一と錯覚し、戦争を望む軍部が後押して制御が効かなくなるプロセスが、真実を調べる学者と物語を創る作家の対談から浮かび上がってくる。2022/08/20
たま
82
加藤陽子さんと奥泉光さんの対談。副題は「太平洋戦争をどう読むか」で、どうしてあのような戦争をしたのか、戦前戦中の史料、戦中戦後の文学作品を取り上げて話し合う。二人とも史料や作品をしっかり読み込み、対談本だが議論の焦点が合って密度が濃い。どうしてあのような戦争をしたのか?加藤さんの思考を追うと、明治維新以降70余年の歴史の中で理念や制度の変質を含む複雑で多面的な事象として捉えなければならないようだ。文学作品は、【安易な物語に陥らない】という視点で論じられておりそのパートも面白い。 2024/11/23
rico
78
このお二人の対談。さすがに読みごたえがある。雑に言えば、より多くの人々が寄って立つ物語が社会を動かすということ?列強を追いかけ、日露戦争に勝利し、軍部が力を持った結果、物語が為政者の思惑をこえ、走り出して止まらなくなって。勝ち筋がなくなった後も突っ走り、最後の1年で最も多くの犠牲者を出した。「ご聖断」がなければ本当に国ごと玉砕してたのではと思うとぞっとする。戦争は始めるより終わる方が難しい。始めない努力より、勇ましい言説の方がわかりやすく響く怖さ。SNSやAI全盛の現代、飲み込まれないことの難しさを想う。2026/05/22
へくとぱすかる
72
軍部が国民に対して戦争熱をあおりながら、いざとなると開戦への圧力を制御できなかった。そして日本型の無責任体制が、敗色が明らかとなった時点でも、戦争の継続をストップしなかった。その根底には、国民に対して情報を隠し、正確な判断をさせなかったこと、さらには国家と国民が直結していて、その間に「社会」が育っていなかったことが大きな要因。現在はといえば、個人が孤立して結びつきが希薄になっていることは、危険な状況であろう。考えずに雰囲気でものごとを決める風潮も、日本の本質が当時と変わっていないことを表すようで恐ろしい。2022/08/06
がらくたどん
64
加藤陽子さんの中高生向けの現代史講座『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』がとても面白かったので。本書は最近太平洋戦争絡みのミステリーの集大成的な第2次世界大戦直後の陰謀ミステリーを上梓された奥泉さんとの対談。太平洋戦争とは何か・なぜ始めなぜ止められなかったか・戦争の物語を読むとはという三つのテーマで語り合う。前出の講座が中高生に「戦争を考えるための材料」をできるだけ特定の誰かが信じる「戦争の物語」にならないように提示する内容だったのに対し本書は当時の日本を動かしていた「戦争の物語」そのものに斬り込む。2025/02/03
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