文春新書<br> 第三次世界大戦はもう始まっている

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文春新書
第三次世界大戦はもう始まっている

  • ISBN:9784166613670

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内容説明

ロシアによるウクライナ侵攻を受けての緊急出版。
戦争を仕掛けたのは、プーチンでなく、米国とNATOだ。
「プーチンは、かつてのソ連やロシア帝国の復活を目論んでいて、東欧全体を支配しようとしている。ウクライナで終わりではない。その後は、ポーランドやバルト三国に侵攻する。ゆえにウクライナ問題でプーチンと交渉し、妥協することは、融和的態度で結局ヒトラーの暴走を許した1938年のミュンヘン会議の二の舞になる」――西側メディアでは、日々こう語られているが、「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確な警告を発してきたのにもかかわらず、西側がこれを無視したことが、今回の戦争の要因だ。
ウクライナは正式にはNATOに加盟していないが、ロシアの侵攻が始まる前の段階で、ウクライナは「NATOの“事実上”の加盟国」になっていた。米英が、高性能の兵器を大量に送り、軍事顧問団も派遣して、ウクライナを「武装化」していたからだ。現在、ロシア軍の攻勢を止めるほどの力を見せているのは、米英によって効果的に増強されていたからだ。
ロシアが看過できなかったのは、この「武装化」がクリミアとドンバス地方の奪還を目指すものだったからだ。「我々はスターリンの誤りを繰り返してはいけない。手遅れになる前に行動しなければならない」とプーチンは発言していた。つまり、軍事上、今回のロシアの侵攻の目的は、何よりも日増しに強くなるウクライナ軍を手遅れになる前に破壊することにあった。
ウクライナ問題は、元来は、国境の修正という「ローカルな問題」だったが、米国はウクライナを「武装化」して「NATOの事実上の加盟国」としていたわけで、この米国の政策によって、ウクライナ問題は「グローバル化=世界戦争化」した。
いま人々は「世界は第三次世界大戦に向かっている」と話しているが、むしろ「すでに第三次世界大戦は始まった」。ウクライナ軍は米英によってつくられ、米国の軍事衛星に支えられた軍隊で、その意味で、ロシアと米国はすでに軍事的に衝突しているからだ。ただ、米国は、自国民の死者を出したくないだけだ。
ウクライナ人は、「米国や英国が自分たちを守ってくれる」と思っていたのに、そこまでではなかったことに驚いているはずだ。ロシアの侵攻が始まると、米英の軍事顧問団は、大量の武器だけ置いてポーランドに逃げてしまった。米国はウクライナ人を“人間の盾”にしてロシアと戦っているのだ。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あすなろ

114
氏の予測や分析が決して全てではない。氏は、露が特に先鋭的な訳でも欧州が安定していた訳でもない、米は顔が見えない時代だ、似ていると言えば第一次世界大戦の起因と似ていると分析し論を展開する。では、誰がウクライナと露の戦争の引き金を引いたのか。長期化するか。それぞれを支援している国は等多数の情報がある。これを自ら受け止めて考え、纏めるという事が今我々に一番求められているのではないか。そこから、例えばこの本の出版後に起きた台湾に対する中国の姿勢にどう対処すべきかや何が起きるのか等の我々一人一人の考えに結実する筈。2022/08/14

belalugosi6997

105
前提として「NATOが招いたウクライナ侵攻」、特にヌーランド国務次官とその一族を徴用したのが銃爪なのは多くの識者の証言で明らかになっている。世間では「民主主義国家VS権威主義国家」の図式だが、著者は否定しおり、「リベラル寡頭制陣営VS権威的民主主義国家」と呼んでいる。特に興味を持ったのは新自由主義で福祉の薄い米帝と共産主義から脱却したロシアでは米帝の方が自殺率が高いことだ。著者の視点から重大な欠陥があるのはロシアとは日露戦争以前から「約束とは守らなくて良い、破るもの」という認識である。ゴロツキ国家である。2023/04/20

まつうら

103
いまウクライナで起きている戦争についてのひとつの考察であるが、納得できる部分がたくさんある。著者は1962年のキューバ危機に近いと主張するが、これはとても説得力がある。当時のソ連はキューバからミサイルを引き上げたが、いまの英米はウクライナから武器弾薬を引き上げなかった。現在のホワイトハウスは軍産ファンドのカーライルに牛耳られているという記事を何かでみたが、本書で書かれていることに重ねても違和感がない。冷静に冷静にと思いつつも、反米感情がムラムラと湧き上がってくるのを抑えるのが、とても難しい。2022/08/16

inami

97
◉読書 ★3.5 ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始して1年が経とうとしているが、著者は本書(22年6月発行)で、初めて見解を公にした。いま起きている戦争の責任は、プーチンやロシアではなく、アメリカとNATOにあり、ウクライナの背後でこの戦争を主導しているのは、アメリカとイギリス・・と、驚きの見解。ロシア・西側の目的やこれまでの経緯等について詳しく説明している。戦争は絶対に良くないことだが、物事は、両方(両者)の意見に耳を傾けることが大事だと思っている。アメリカにべったりの日本はちょっと危うい気がする。2023/01/21

アベシ

97
アメリカに敵とみなされた国は赦されることはないのだろうか?常に世界的な大きな枠組みの中で、弱体化が目指される。民主主義さえ国民を弱体化する方便のように感じてしまう。「世界の不安定がアメリカには必要」というレトリックは現実的でおろしいことである。そういう文脈で考えると日本は核武装すべきという主張が説得力を持つ。政治的な現実主義とは冷徹で厳しいものだ。ブロック化のいつか来た道ではなくこの地政学的な状況を逆手にとった外交を日本政府には期待したい。結局、日本はいつかアメリカと対立する運命にあるようだ。2022/11/22

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