ちくま新書 間違いだらけの風邪診療 ――その薬、本当に効果がありますか？

著者名：永田理希【著者】

筑摩書房（2022/06発売）

• ISBN：9784480074850

内容説明

鼻・のど・咳・発熱……「風邪様症状」が出た時に、受診すべきタイミング、「見極めスキル」のある医師はどこをどう診てどう治療するか、処方薬や検査の目的と意味、メリット・デメリットなど、最新の正しい知識を、風邪診療のスペシャリストである臨床最前線の敏腕開業医がわかりやすく解説します。感染症治療には、昔の常識が現在の非常識である、というリアルが実はたくさんあります。本書を読めば、どういう医師が信頼できるかも見えてくるはずです。

目次

はじめに
第１章　風邪（かぜ）という名の感染症のリアル
感染症とは
感染力を示す「基本再生産数」
致死率とは何か
集団免疫とは何か
そもそも風邪とは
風邪ウイルスの季節性と特徴・各症状の頻度
ウイルス感染症と細菌感染症の症状の違い
なぜ、風邪（ウイルス感染症）か細菌感染症かの見極めが必要か
本気でヤバい世界的耐性菌問題
風邪症状で医者にかかる目的
第２章　風邪の見極め検査のリアル
「採血検査」で風邪を見極められるか？
ＷＢＣ、ＣＲＰという名の炎症反応
乳幼児の場合には違うのか
４つの〝診る〟
外来診察室という名のブラックボックス
第３章　ＣＯＶＩＤ‐19と発熱・風邪診療外来のリアル
発熱等で受診した場合の７つのパターン
ＣＯＶＩＤ‐19と２つの検査
抗原定性検査キットは信頼できるか？
レントゲンとＣＴで診断できるか？
「検査するかどうか」の見極めが医師の仕事
科学的根拠に基づいた医療（ＥＢＭ）
ポストパンデミックの「２つの迷子」
後遺症という「迷子」
第４章　風邪薬のリアル
１　風邪と風邪薬の基礎知識
世界で一番多い感染症は？
風邪薬を早く飲めば早く治る？
よくみかけるニッポン伝統風邪薬セット
２　はな風邪
はな風邪に【鼻炎止め（抗ヒスタミン薬、去痰薬）】は効くのか？
３　のど風邪
「のど風邪」に【炎症止め（トラネキサム酸、トローチ）】は効くのか？
「のど風邪」に【うがい薬】は効くのか？
４　せき風邪
咳はなぜ出るのか？
「せき風邪」に【咳止め（鎮咳薬）】は効くのか？
「せき風邪」に【気管支拡張薬】は効くのか？
あなたのその咳、本当に「咳喘息」？
「せき風邪」に【去痰薬】は効くのか？
「せき風邪」に【抗ヒスタミン薬】は効くのか？
「せき風邪」に【ロイコトリエン受容体拮抗薬】は効くのか？
「せき風邪」に【はちみつ】は効くのか？
せき風邪と薬・まとめ
５　ねつ風邪
「ねつ風邪」に【解熱薬（熱さまし）】は効くのか？
解熱薬の量とタイミング
「ねつ風邪」に【クーリング】は効くのか？
６　総合感冒薬
「風邪」に医療機関で処方される【総合感冒薬】は効くのか？
「風邪」に市販の【総合感冒薬】は効くのか？
危険な風邪薬
７　抗菌薬、サプリメント、点滴、漢方薬
「風邪」に【抗菌薬（抗生物質）】は効くのか？
「風邪」に【サプリメント】は効くのか？（ビタミンＣ・Ｄ・亜鉛・鉄）
「風邪」に【点滴】は効くのか？
「３た論法」に陥っていないか
日にち薬、時薬という考え方
「風邪」に【漢方薬】は効くのか？
結論：風邪薬は必要か？
第５章　マスクのリアル
マスク装着と予防効果のエビデンス
ソーシャルディスタンス、ユニバーサルマスクという新しい常識
マスクの例外、マスクと会食
マスクの素材とその効果の違い
マスクの正しい着け方
肌荒れ対策、眼鏡曇り対策
第６章　消毒薬のリアル
消毒とは？
洗面器で手を消毒していた時代
手洗いの効果を上げる方法
アルコール消毒の効かないウイルス
「アルコール」は濃度が重要
「次亜塩素酸ナトリウム」使用上の注意点
「家庭用洗剤（界面活性剤）」は消毒に使えるのか？
「次亜塩素酸水」は消毒に使えるのか？
「二酸化塩素」で空間除菌？
結論：感染対策としての消毒薬の正解は？
キズ・ケガ・ヤケドやのどの消毒は、害でしかない？
間違いだらけの感染対策──新型コロナウイルス
第７章　インフルエンザウイルス感染症のリアル
感染力の高い時期
無症候性感染（asymptomatic infection）とは？
抗インフルエンザ薬の種類とその効果
抗インフルエンザ薬を飲むべき場合とは？
インフルエンザウイルス感染症に漢方薬は効くのか？
インフルエンザワクチンの３つの効果
インフルエンザ不活化ワクチンの副反応
「インフルエンザワクチンはシートベルト」と理解しよう
第８章　風邪に似た急性気道感染症のリアル
急性気道感染症とは
急性気道感染症と風邪はどう違う？
１　急性中耳炎
急性中耳炎とは
なぜ小児（乳幼児）は急性中耳炎になりやすいのか？
急性中耳炎に抗菌薬は必要か？
抗菌薬入り点耳薬は効くのか？
ベストな抗菌薬とは？
鼓膜切開の判断
２　急性鼻副鼻腔炎
急性鼻副鼻腔炎とは
急性鼻副鼻腔炎に抗菌薬は必要か？
乳幼児（６歳未満）とはな風邪
３　急性咽頭（扁桃）炎
急性咽頭（扁桃）炎とは
急性咽頭（扁桃）炎の90％は抗菌薬不要
溶連菌性咽頭（扁桃）炎とは
溶連菌に抗菌薬を処方する理由
溶連菌性咽頭（扁桃）炎をどうやって見極めるか
ベストな抗菌薬とは？
３歳未満の溶連菌性咽頭（扁桃）炎に抗菌薬は不要
治癒後のルーティン尿検査は意味がない
４　急性気管支炎
急性気管支炎とは
乳児の急性細気管支炎とは
乳児の急性喉頭気管支炎（クループ）とは
急性気管支炎に抗菌薬は不要
感染後（遷延性）咳嗽
咳喘息とは
５　肺炎
急性肺炎とは
乳幼児と高齢者の急性肺炎の注意点
胸の聴診の異常音と肺炎
胸部単純Ｘ線写真は万能ではない
急性肺炎の見極めは「呼吸数」で
マイコプラズマ肺炎とは
マイコプラズマ肺炎の見極め
第９章　風邪の「見極めスキル」のリアル
何科にかかるべきか？
風邪を「診る」とは
発熱・風邪を見極めるスキルの有無
知識のアップデートになぜ格差が生じるのか？
インフォデミックに注意せよ
おわりに
図版出典
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

[そうたそ]

★★★☆☆ コロナウイルスが猛威を奮ってからは、各所で嫌という程目にすることになった風邪に関する知識。とはいえ、未だ間違った知識・診療が当たり前のように蔓延る世の中。本書では現役医師である著者が最新の風邪知識をわかりやすく解説してくれている。知っていることも多かったが、割と隅から隅までしっかりとカバーした解説がされているように思えた。深く踏み込んだ解説は期待できないものの、結局風邪って何なの？という軽い疑問から手に取るにちょうど良い。今は診療を受ける側にも正しい知識・選択が必要な時代なのだと。

2022/09/22

[hirokun]

★4　風邪症状に対する治療および薬の使い方に関する解説。エヴィデンスを基にする医療が大切であることが今回のコロナ騒動においても巷を賑わあせたが、この本は、それについてもわかりやすく解説している。どちらかゆうとすでに知っている知見が多かったが、マスクの効能で、インフルエンザウイルスとコロナウイルスで効能に差があることは初めて知った。インフルエンザにおいて、マスクの効用は限定的であることは、常識的に知っていたが、今回コロナにおいて、なぜマスクの着用がこれほどまでに言われるのかずっと疑問に思っていた。

2023/03/09

[ゆうすけ]

喉がすぐ痛くなりやすい体質で、すぐ風邪をひきます。この2年、気軽に医者にいけなくなりましたが、いいことなのかもしれないと思ったり。本書を読んで思ったのは、風邪の診断は非常に難しいということ。臨床現場で鍛錬をするだけではなくて、常に最新の研究等も追いかける必要がある。昔主流だった薬が全然時代遅れになっていることもよくあるみたいだ。風邪薬のほとんどが意味がないだけではなくて、デメリットの方が多いというのは衝撃。そして抗生物質は本当に駄目ですね。細菌を殺すもので、ウイルスには意味がないということがよくわかる。

2022/09/29

[乱読家 護る会支持！]

感染症専門医による、 「風邪様症状」のある患者さんが受診すべきタイミング、 受診したとして「見極めスキル」のある医師はどこをどう診てどう治療しているのか、 処方薬ごとの目的と意味、メリット・デメリットなど、 最新の論文やエビデンスに基づいて臨床現場目線から書かれた本。 この３年間で、感染症に対するさまざまなな情報に溢れて、国民の多くはちょっとした専門家モドキ（？）になられたのではないかと思いますが、 この本、どっかで聞いたことがある話ばかりやなぁ、と思って、あまり真剣に読む気がせず、パラパラ読み。

2023/01/14

[Go Extreme]

風邪（かぜ）という名の感染症のリアル： 感染症 致死率 集団免疫 基本再生産数 風邪の見極め検査のリアル： ４つの診る 外来診察室という名のブラックボックス ＣＯＶＩＤ‐１９と発熱・風邪診療外来のリアル 風邪薬のリアル： 風邪と風邪薬の基礎知識 はな のど せき ねつ 総合感冒薬 抗菌薬、サプリメント、点滴、漢方薬 マスクのリアル 消毒薬のリアル インフルエンザウイルス感染症のリアル 風邪に似た急性気道感染症のリアル： 急性中耳炎 急性鼻副鼻膣炎 急性扁桃炎 急性気管支炎 肺炎 風邪の見極めスキルのリアル

2022/07/17