ちくま新書<br> 明治史講義【グローバル研究篇】

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ちくま新書
明治史講義【グローバル研究篇】

  • 著者名:瀧井一博【著者】
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 筑摩書房(2022/06発売)
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  • ISBN:9784480074560

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内容説明

かつて西洋文明の圏外にあった日本は、西洋に由来する価値観や制度を受容し、定着させ、近代化を成し遂げた。明治維新が稀有な人類の歴史的経験であることに疑いの余地はない。それはいかなる思想と条件の下、可能となったのか。明治維新は世界史においていかに語られ、そこにどんな意味が見出されているのか。世界各地域の第一線で活躍する日本研究者の知を結集し、定説とされる歴史観に囚われず、国際的に大きなインパクトを与えた明治維新の世界史的意義を多面的に検証する。

目次

はじめに……瀧井一博
第1講 オスマン官僚と明治官僚──ムスタファ・ビン・ムスタファと渡邉洪基が見たもの……ジラルデッリ青木美由紀
二人の帝国官僚の旅行記
二人のプロフィールと旅行の目的
二人の行動の違い
二人の見聞したもの
露土戦争前夜
二人の「東洋」観ギャップ
第2講 台湾で再現した「明治」──児玉後藤時代の鉄道技術者集団形成……蔡龍保
明治中期日本鉄道技術集団の崩壊および台湾への拡散
日本統治時代初期の鉄道技術者集団
児玉後藤時代における鉄道技術者集団の再編
随意契約と台湾の鉄道事業における産官連携
台湾で再現した「明治」
第3講 一九世紀の革命としての明治維新──ナポレオンのイメージとナショナリズムの矛盾……マーク・ラビナ
革命としての明治維新
一九世紀ハンガリーの国民革命との類似と差異
一九世紀ナショナリズムの理想
ナポレオン・ボナパルトという矛盾
吉田松陰とナポレオン
ジュゼッペ・マッツィーニ
ヨカイ・モル
グローバルな革命史のなかの明治維新
第4講 明治日本と世界経済との関連──情報通信の組織化……ジャネット・ハンター
はじめに
一九世紀後半の国際情報革命
日本の郵便制度の発展
日本の郵便制度への外国からの意見
結論
第5講 明治天皇の皇位継承儀礼とその遺産……ジョン・ブリーン
はじめに
新天皇の形成
明治にできた天皇と皇位継承儀礼
明治期のモデルと近代天皇の完成
大正天皇と天照大神・皇霊
結び──明治の遺産
第6講 中国の明治維新研究概観──中華人民共和国成立後七〇年間の展開……秦蓮星
劉岳兵
二〇世紀における明治維新研究の回顧
二一世紀以降における明治維新研究の整理
広い視角からの明治維新の影響の探究
明治維新の深い含意の探究
明治維新に関する学術書、史料集、通俗的な読み物および翻訳書
明治維新研究の今後の展望
第7講 明治に学ぶ──過去・現在・将来のグローバル化……ダリル・フラハティ
過去のグローバル化、現在のグローバル化
郷愁感──忘却と「過去のグローバル化」
楽観主義──時勢と「現在のグローバル化」
改革の希望──暗い「将来のグローバル化」のスペクター
第8講 地域社会の固有性と普遍性──明治維新前後の越前大野を例に……マーレン・エーラス
はじめに
大野に見る江戸時代の貧民救済
身分集団の自律性
明治以降の勧進の禁止
町人の貧民救済と役割分担
明治以降の地域福祉
第9講 近代エジプトにおける明治日本──『東方の太陽』を中心に……ハサン・K・ハルブ
アラブ文献における日本像
近代エジプトにおける明治日本
明治維新に関するカーメルの紹介
日本の近代化を通して西洋への服従を否定
日本の近代化のオリジナリティ
日本とエジプトの近代化の比較──経済と政治
日本の近代化に対するカーメルの評価
むすび
第10講 明治維新に関するベトナムの近年の研究関心……グエン・ヴー・クイン・ニュー
はじめに
明治維新の概念
日本の近代化への関心
日本の文明化の追求
福沢諭吉の研究
「明治維新とベトナムドイモイ」国際シンポジウム開催
おわりに
第11講 中国近代化のモデルとしての明治維新像──孫文と皜介石の日本認識の比較……黄自進
はじめに
明治維新をめぐる両者の評価
明治維新成功の要因に対する両者の認識
中国近代化モデルとしての日本の参考価値
おわりに
第12講 トルコから見た明治維新……セルチュク・エセンベル
オスマントルコにおける明治維新への熱烈な興味
治外法権廃止と立憲君主制への関心
エルトゥールル号の悲劇
中村健次郎と山田寅次郎
日露戦争勝利への世界的祝賀
日土間の私的交流
知識人の日本への関心とイブラヒムの活動
日本・トルコの外交関係
トルコにとって明治日本がもつ意味
第13講 フランスから見た明治維新──第一回国際東洋学者会議……ベルランゲ河野紀子
幕末との連続性を象徴する「フランス」
福沢諭吉とレオン・ド・ロニー
フランス軍事顧問団とアルベール・デュ・ブスケ
フランスにおける明治
第一回国際東洋学者会議
東洋学と日本
「東洋知の万国博覧会」
今村和郎とロニー
明治維新と文部省高官田中不二麿
フランスで客死した留学生
デュ・ブスケと国際東洋学者会議
結びに
第14講 タイ地方行政能力向上プロジェクト──「明治日本」の視点から考える……永井史男
日本の近代化からタイの近代化へ
タイ近代化の歩み──外圧なき開国
「絶対王政の絶対化」
人民党による立憲革命
一九九七年タイ王国憲法と地方分権
アジア通貨危機と日本の支援
タイ地方行政能力向上プロジェクト
日タイの地方自治体の違い
なぜ自治体間協力なのか
明治以降の日本に学ぶこと
第15講 帝国の襲来──幕末日本のエリート官僚はいかにして生まれたか……アリステア・スウェール
東アジアにおける大英帝国
開国以降の列国の動き
薩英戦争以降の意外な展開
薩摩藩の興業政策と薩長の留学政策の比較
留学団の遺産
第二次長州征伐に対する英国の対応
英国が望んだ徳川政権の終幕
結びに
第16講 紀州の夜明け前──紀州藩武家出身女性の明治時代への適応……サイモン・パートナー
はじめに
小梅の生い立ちと結婚生活
夫の死と生活の変化
絵師・詩人として、教育者として
女性の社会進出の真のパイオニアとして
編・執筆者紹介
凡例

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

さとうしん

18
外国人研究者を中心とする論集。本書の内容は、①同時代の海外の目から見た明治維新、②外国人研究者によるグローバルが絡まない研究、③海外の研究動向に大別され、まとまりに欠ける。元の国際シンポジウムの会議論文集ならそれで良かっただろうが、一般向けの読み物としては①に絞った方が良かったのではないか。内容は、特に第12講で、「親日」と思われてきたオスマン帝国人も、実際のところ明治日本のイメージは否定も含めて多様であったと指摘しているのが興味深い。2022/06/19

バルジ

1
明治維新の世界史的意義に留まらない多様な論点を含む小論集。テーマが多様な為にやや散漫な印象もあるが、海外から見た「明治維新」の政治的・社会的な意義はマクロな点に留まらずミクロな視点も含む。本書は主に「各国から見た明治維新」と外国人研究者の明治維新研究に大別される。後者は大野藩や紀州藩といった各地域の社会史的な個別研究に近い。一方前者は明治維新の意義とその限界も論ずる。ハンガリー等の革命と明治維新どの比較の視座は大変面白く更なる成果発表が待たれる。2024/01/07

Go Extreme

1
オスマン官僚と明治官僚―ムスタファ・ビン・ムスタファと渡邉洪基が見たもの 台湾で再現した「明治」 一九世紀の革命としての明治維新 明治日本と世界経済との関連 明治天皇の皇位継承儀礼とその遺産 中国の明治維新研究概観 明治に学ぶ―過去・現在・将来のグローバル化 地域社会の固有性と普遍性 近代エジプトにおける明治日本 明治維新に関するベトナムの近年の研究関心 中国近代化のモデルとしての明治維新像 トルコから見た明治維新 フランスから見た明治維新 タイ地方行政能力向上プロジェクト 帝国の襲来 紀州の夜明け前2022/07/14

梅子

0
"知らなかった事を知る"というより"興味の範囲を広げる"為の小論文集。欧米列強の帝国主義に対抗する為に近代化を強いられた日本とオスマンの共通性、ほぼ同時期に近代化し独立を維持したにも関わらず目的意識は著しく異なっていた日本とタイの差異性、あるいは共に日本での権益拡大を目論む列強同士だったにも関わらず明暗がはっきり分かれたフランスとイギリスなど、明治維新を原点として様々なベクトルに書き表せそうな各国それぞれの性格や選択が面白かった。また旧清勢力圏が共に「近代化と天皇制を両立させた」点を重視するのも興味深い。2022/08/03

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