内容説明
律令体制の限界、財政破綻の危機……。この国を救う――。たとえ我が名が残らなくとも。“学問の神様”ではなく“政治家”としての菅原道真に光を当てた、第12回日経小説大賞受賞作家による感動の歴史長編。文人として名を成し、順調に出世していた菅原道真は、讃岐守という意に反した除目を受け、仁和2年(886)、自暴自棄となりながら海を渡って任国へ向かう。しかし、都にいては見えてこなかった律令体制の崩壊を悟った道真は、この地を“浄土”にしようと治水を行なった空海の想いを知ると共に、郡司の家の出でありながらその立場を捨てた男と出会うことで、真の政治家への道を歩み出す。「東風吹かば匂いおこせよ梅の花 あるじなしとて春を忘るな」に込められた道真の熱き想いとは。菅原道真の知られざる姿を描いた傑作歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
134
菅原道真の政治的才能を最初に見抜いたのは、藤原氏の総帥基経だった。学者の道真をあえて讃岐の国司に任じて行政現場を経験させ、実子の時平よりも事実上の後継者に見込んだ。従来の伝記では軽視されていた讃岐時代に焦点を当て、最初は左遷されたと腐っていた道真が理想と現実の違いを知り、苦労を重ね一流の政治家に鍛え上げられていくまでを綿密に描く。基経の思いに応えた道真は国と民のため政治改革に奔走し、最後は自らを犠牲にして理想の実現を図る。後半はやや駆け足だったが、国を思う政治家の成長物語としてのドラマは感動的で読ませる。2022/08/02
初美マリン
116
漠然と学問の神様としか知らなかった菅原道真。学問知識を実践へと移した。讃岐の国司として赴任してから民を活かすことが国を活かすことと身をもって知り税制改革に全力を尽くす。なんとも魅力的な登場人物が多いことか。2023/03/27
よこたん
41
“けれど、梅は咲く。いまは、鮮やかな紅のけぶりもなく、つぼみがあることさえ想像できない姿だというのに。それでも、梅は咲く。寒中に灯る星のように。いつか、ふさわしい時が来れば、咲くのだ。” 菅原道真が太宰府に左遷される前に、讃岐の地にも赴いていたとは知らなかった。才と知識がありながらも、見えていなかった見ようとしていなかった民の暮らしを知り、打ちのめされる。田畑、税の仕組みの話が難しい。そして、藤原時平と対峙する場面での、桜と梅の花の比喩にヒヤヒヤ。従者の味酒(うまさけ)安行が魅力的だった。2023/03/20
rosetta
33
★★★☆☆学者の家系に産まれ、文章博士、内政官僚として着実に地歩を築きつつあった菅原道真は四十二歳の時に讃岐国の国司を命じられる。それは彼にとっては左遷に思える人事だったが実は杓子定規で机上の空論に陥らないよう現場を見せようとする天皇や藤原基経の遠慮だった。道真の人となりがどれ程フィクションが入っているのかは分からないが、最初四角四面で意に染まない事にはすぐ激高するという性格は、なるほど死後に祟って恐れられそうではある(笑)少年時代から道真の死まで忠実に仕えた安行の健気さが愛おしい。2022/08/03
まえぞう
21
平安時代初期、律令制が崩れていくなかでの改革を担った菅原道真、天神さまのお話しです。著者の作品としては3作目になりますが、どうも歴史と人物の解釈が現代的というか、違和感を持ちます。それでも、古代から中世に向かう変化の一端を垣間見ることはできたように思います。2023/09/04
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