内容説明
地方からリオのスラム街にやってきた、コーラとホットドッグが好きなタイピストは、自分が不幸であることを知らなかった――。「ブラジルのヴァージニア・ウルフ」による、ある女への大いなる祈りの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
124
装丁が素敵すぎる。ブラジル人作家である著者の魅惑的な顔が金色に煌めく星空の中に浮かぶようにコラージュされているのか。本体も含めピンク色がチャーミング。中身も負けじと読み手に訴えかけてくる。描かれるのは著者と同じ貧しい北東部から来た女性。宝石ではないただの石でしかない存在だとして、その悲しき姿を物語る。敢えて男の語り手で力強く奇妙に。頭の中から溢れ出るような赤裸々な言葉に取り込まれ、もう息継ぎができないと思ったら語り手が息継ぎさせてくれるユーモアも。そして女性と語り手が重なり合う尊い祈りと現実に感じ入った。2021/04/14
どんぐり
76
ブラジルの作家が書いた小説。語り手によって語られる「物語内容」が「物語」という構造になっている。物語を理解するのに追いつけず、思わず「クソッ!」と叫びたくなる。語り手が勝手に自分の頭の外でしゃべっていやがる。これは読み手にはストレス。全然面白くない。日本翻訳大賞って、きっと本嫌いを増やすために設立されたにちがいない。よく考えよ。2023/11/09
ケロリーヌ@ベルばら同盟
54
「北東部から来た女の子」処女で無害で、いなくなっても誰も困りはしない女の子の物語を、「ぼく」裕福で退屈で、歯痛に悩まされていて、スノッブを恥じる若者が創作する。という、クラリッセ・リスペクトルの絶筆。まるで卵のような、脆く不安定な3重構造。夜空に輝くことなく地に果てる小さな星への挽歌。2021/05/22
ヘラジカ
54
『カーニヴァルの残りもの』以来のリスペクトル。自分が不幸であることを知りもしない純真無垢な少女、醜く誰からも顧みられない存在を、これまた独特な自意識を持った語り手が吟遊詩人のように高らかに歌い上げる。ありふれた悲劇に神話のような荘厳さが備わった作品。思弁的と言われる他の中長篇作品も是非読んでみたい。2021/03/27
みねたか@
30
地方から都会に働きに出た貧しい少女の生と死。主題は「踏みつぶされた無垢」、「名もなき悲惨」。語り手によれば彼女は、迷信深く、誰も欲しがったりしない、いなくなっても誰も困りはしない、決まったことしかできない女である。しかし彼女を描くその筆には彼女を慈しむような優しさもが滲む。彼女に対する同情や憐憫?いや、それは、私たちの生も描かれている彼女の生と何ら変わらない故のシンパシーの現れたろうか。散文詩のような美しさもたたえる作品。2022/12/23
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